ロコ・ロンドン金取引とは?――甘い話にご用心

» 2007年10月10日 16時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「今年入社した新人が契約を取れずにいる。助けてもらえないか」――ある女性はこんな電話を受け、気の毒に思って520万円を支払った。「1カ月後を楽しみにしてください」と言われていたが、突然「負けが込んできたので、やめましょう」「80万円しか残っていない」と連絡があって驚いた。彼女は預金のつもりで520万円を支払ったのだが、全額が戻ってくる可能性は低い。 

 これは国民生活センターに寄せられた悪質業者による「ロコ・ロンドン金取引」の相談事例だ。ロコ・ロンドン金取引とは、消費者が業者に証拠金を預け、その証拠金の何十倍もの取引を行うというもの。ロンドン市場の金価格の変動によって、利益や損失が違ってくる。だが悪質業者の手口として、消費者が利益を得ていれば「損が出るまで投資を続けさせ」、損失が出れば「追加の証拠金などを要求」し、被害額を膨らませるケースがある。

 このほか、未公開株や投資組合等への出資などの金融トラブルが増えている。冒頭の例も含め、狙われているのは主に高齢者だ。

 未公開株の相談事例としては、IT企業の未公開株を電話で勧められ「半年後に上場する」や「1株10万円の未公開株が、上場すれば50万円以上になる」などと説明されたという。ある70歳代の女性は、総額1100万円の契約を結んだが、上場すると説明された時期が来ても、その企業は上場しなかった。

 投資組合への出資を勧められるケースもある。若い男性が何度も自宅を訪れ「お金を5年間預ければ、半年ごとに配当金が支払われる」などと勧誘された。70歳代の女性は匿名組合に100万円を出資したが、約束の期日が過ぎても配当金が支払われなかった。

相談者の契約金額

高齢者の金融トラブルが増加傾向

 悪質業者による未公開株や投資組合への出資など、高齢者をターゲットにした金融取引が深刻化している。全国の消費生活センターによると、70歳以上の相談件数は年々増加傾向にあり、2006年度は全体の12%に達した。中でも高齢者の年金や貯蓄などを狙った訪問販売や電話勧誘による被害が増えているのが特徴で、金融取引をめぐるトラブルは30%を突破した。 

 国民生活センターは8都県市、3協会※と共同で、「高齢者金融取引110番」を実施し、高齢者からの苦情や相談を受け付けた。高齢者被害に関する相談は242件で、そのうち金融取引に関連する相談は59件。相談受付日は9月11日と12日。

※8都市:東京都消費生活総合センター、埼玉県消費生活センター、千葉県消費者センター、かながわ中央消費生活センター、さいたま市消費生活総合センター、千葉市消費生活センター、横浜市消費生活総合センター、川崎市消費者行政センター。
※3協会:全国消費生活相談員協会、日本消費者協会、日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会。

 契約内容を見ると、未公開株(14件)、投資組合等への出資(8件)、ロコ・ロンドン金取引(6件)など利殖関係の相談が多かった。この他、保険・共済(10件)や多重債務・サラ金(9件)なども目立った。また販売方法は、訪問販売が最も多く24件、次いで店舗購入13件、電話勧誘販売12件だった。

 平均契約金額は未公開株が367万4000円、投資組合等への出資が656万9000円、ロコ・ロンドン取引が476万3000円だった。国民生活センターでは「多くの相談者は金融商品の仕組みを理解していない。一方、悪質業者も金融商品のメリット――儲かることばかりを強調し、リスクがあることを説明していない。契約をする際には1人で決めるのではなく、家族や第三者と相談することが大切」と被害防止を呼びかけた。

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