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» 2007年08月24日 14時29分 公開

再編・淘汰が進む消費者金融業界の行方は?

消費者金融が苦しんでいる。上限金利の引き下げ、貸付制限、過払い金の返還によって、成長が見込めない。市場からは「さらなる再編」を期待される中、今後の株価をトレーダーズ・アンド・カンパニーのアナリストが分析した。

[土肥義則,Business Media 誠]
再編淘汰が進む消費者金融業界

 消費者金融業界3位のプロミスと5位の三洋信販が経営統合を示唆する報道が7月にあった。これの報道を受け、7月19日に消費者金融各社の株価は急上昇した。だが、再編期待だけで株価の上昇を維持するには無理があり、その後は下落傾向にある。

 消費者金融業界は現在、3つの難題に苦しめられている(5月16日の記事参照)。貸金業法が2006年の国会で成立し、上限金利が年29.2%から年20%に引き下げられる。完全施行を前にアコムとアイフルは前倒しで、貸出金利を引き下げた。また、利用者が借りられる金額に上限を設ける総量規制が年末から始まりそうだ。利用者の年収3分の1を超えるような過剰貸付が禁止となるため、「業界の収益環境が悪化するのは避けられない」(消費者金融幹部)と悲観的な見方が一般的だ。

 消費者金融業界は、利息制限法の上限金利(年15%〜20%)を超える過払い金の返還にも追われている。2007年3月期の決算では、大手4社(アイフル、アコム、武富士、プロミス)の赤字額が1兆7000億円を超えた。その要因は返還費用と、将来に備えた引当金だ。さらに7月13日の最高裁判所では、業界を“震え”させる判決が下った。これまで過払い金の返還は、提訴から返還までにかかる利息は「遅延損害金」として、借り手に支払ってきた。だが7月の判決では、過払い金発生から提訴まで年5%の利息を付け、借り手に支払うというものだった。最高裁の判決であるため、市場関係者の間では「消費者金融業界全体に適用される」という見方が強い。

上限金利・総量規制・過払い金の返還で、成長が描けない

 米国のサブプライムローン(低所得者層向け住宅ローン)問題で、日経平均株価が年初来安値(年初から現在までで最も安い株価)を更新した8月17日、大手消費者金融の株価も大きく下落した(8月22日の記事参照)。アイフルと武富士は上場来安値(上場してから最も安い株価)をつけ、アコムは年初来安値を更新した。プロミスは安値を更新しなかったものの、三洋信販との経営統合を発表した翌日に、上場来安値を更新していた。

アイフルと武富士は上場来安値をつけた

 上限金利、総量規制、過払い金の返還――具体的な成長シナリオが描けないため、消費者金融各社の株価は冴えない状況が続いている。トレーダーズ・アンド・カンパニーのアナリスト池田允史氏は「市場は一段の業界再編を迫っている」と指摘する。今後も株価は低迷を続けるのか。業界の再編淘汰の予想図と、空売り※を狙う銘柄を語った。

※空売り……証券会社から株券を借りて売る取引。株が値下がりして、買い戻すと利益が出る投資方法。

消費者金融の再編はメガバンク2社の“分捕り合戦”

アイフルの株価チャート"アイフルの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)アコムの株価チャートアコムの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 プロミスと三洋信販の経営統合について池田氏は「優良顧客を多く抱えるプロミスにとって、三洋信販と統合するメリットは小さい」と指摘する。消費者金融業界の顧客は、一般的に“ピラミッド”構造となっている。大手は優良な顧客を多く囲い込み、中小は多重債務者や延滞率の高い顧客が多い。

 さらにプロミスと三洋信販の経営統合は「両社の主力銀行でもある三井住友銀行が引き合わせたもの。これまで高金利の融資で高収益を上げてきたが、貸金業法の改正で消費者金融業の“うまみ”が少なくなっている。そのため“残存者利益”※を狙って、三井住友銀行が経営統合を推し進めた」と見ている。

※市場が縮小して他社が撤退した後、残った企業が利益を得るということ。
武富士の株価チャート"武富士の株価チャート(1年:縦軸の単位は円)プロミスの株価チャートプロミスの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 消費者金融の再編は、メガバンク2社の“分捕り合戦”の様相を示している。三菱UFJグループはアコムと資本・業務提携をしており、三井住友銀行を追随する格好だ。

 今後の再編で注目されているのは、残るアイフルと武富士だ。そんな中、米ゼネラル・エレクトリック(GE)がレイクを売却する方針を、8月21日に発表した。レイクの身売りをめぐって、早くも「アイフルが関心を寄せている」という報道が出たが、「アイフルにレイクを買収する力はない。金融機関など第3者が主導権を握って、再編が進んでいくだろう」と見る。

 大手消費者金融は外国人の持株比率が過去最高の水準にあるのも、再編の動きに大きな影響を与えそうだ。「アコムが25%、アイフルとプロミスが40%、そして武富士が53%と最も高い。武富士に対し、外国人株主の“圧力”が強くなる可能性が高い。今後は、中堅クラスの消費者金融が大手に集約されていくだろう」と予測する。

中堅の消費者金融を空売り

 上限金利の引き下げと総量規制によって「消費者金融の株価が上がる要素は少ない」と池田氏は断言する。「上限金利が年20%に抑えられると、貸出競争が加速して、耐え切れない企業が出てくるだろう。さらに過払い金の返還が重くのしかかり、2〜3年は苦しい状況が続きそうだ」と厳しい予想を示す。

 それならば「空売り」はどうだろうか。池田氏は中堅の消費者金融が狙い目だという。「貸付審査が甘い企業が多く、財務体質が良くない。クレディアやシンキの空売りを狙うのはどうだろうか」と語った。

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