黒人男性と並んでベンチに腰掛けるオダギリジョー。おもむろにデジカメを男性の前に差し出し、やがて2人は声を立てて笑い始める――。
少し前まで流れていたデジカメのテレビCMだが、ここで注目してほしいのはデジカメではなく2人のいる場所だ。彼らがどこに座っているか分かるだろうか。どこかの小ぎれいな公園のベンチだと思った人もいるかもしれないが、実は米国のバス停だ。
CMだからきれいなのは当然とはいえ、あれほど快適な雰囲気のバス停は、日本ではあまりお目にかかれない。屋根もベンチもあるところもあれば、地元の人が持ち寄ったらしきいすが雨風にさらされているところも、さびついた時刻表が置かれているだけのところもある。場所によって違いはあるが、日本のバス停は立ったまま待たされるところが多く、快適とは言えないのが現状だ。しかしバス事業者がバス停の修理・維持費用を持つというのもなかなか難しい。
こうした状況をバス事業者側の負担なしで打開する手法がある。欧米で広まっているPPP(Public Private Partnership)だ。官(Public)と民(Private)の連携・協働によって、公共性の高い事業をよりよく進める手法として注目されている。バス停の場合は、停留所を広告スペースとして民間企業に委託し、広告スポンサーを募り、その収益でバス停の整備・維持管理を進めるということになる。日本でも2003年の規制緩和以来、各地で徐々に実施されている。
この事業を先導したのはフランス系の広告会社エムシードゥコー。2006年には米国の屋外広告大手であるクリアチャンネルも参入している。こういった流れの中、同年11月には東京都交通局が、オリンピック招致や東京マラソンの開催などを見据えて、「東京の景観や街並みにふさわしい新しいタイプの広告付きバス停留所」を設置することを発表。2007年度からの3年間で、都心部を中心に100基程度を設置する予定だ。
自治体の主導とはいえ、改修工事や広告物の運営は民間企業が請け負うことになる。また、新しい広告付きバス停は、時刻表の文字を大きくしたり、太陽電池やLEDによる省エネタイプの照明を採用したりと、利用者の利便性や環境に配慮したものになるという。
きれいになったバス停で、オダギリ君のような愉快なコミュニケーションが生まれる、なんてこともあるかもしれない。
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