PCと腰痛・肩こりの因果関係と対策健康は自分の手で守れ!(1/2 ページ)

» 2008年03月26日 09時00分 公開
[加山恵美,ITmedia]
@IT 自分戦略研究所

 これを読んでいるあなたは、何時間その姿勢でいますか? 人間が同じ姿勢を保つ筋肉は30分しかもたないそうです。それ以上同じ姿勢を続けていると、知らず知らずのうちに体を痛めることになるのです。

※本記事は2002年4月24日に@IT自分戦略研究所に掲載された記事を、一部加筆・編集したものです。

ビジネスパーソンの敵、腰痛・肩こり

 ビジネスパーソンでも、そうでなくても、PCに長時間向き合い、同じ姿勢を続けるのは体に良くありません。客先巡りのサポートや営業で、少しでも動き回る機会があればまだよいのですが、座りっぱなしで画面を注視したままでいるのは、どんなに健康でタフな人でも無理がきます。

 どのオフィスでも、個人の机にPCがあるのと同様に、肩こり対策グッズも個人の席や周囲に必ず1つは常備されていませんか? しかし、PCに向かうのが体に悪いと分かっていても、PCに触らないと仕事になりません。そこで今回は、PCに向かう姿勢が体にどう影響を与えるのか、どんなストレッチが効果的なのか、セサモイドカイロプラクティックオフィスの先生に聞いてみました。

同じ姿勢を長時間続けると

セサモイドカイロプラクティックオフィスの仲井光二先生。米クリーブランド カイロプラクティック大学卒業。米国公認カイロプラクター、カリフォルニア州公認カイロプラクター、米国カイロプラクティック協会公認スポーツトレーナー

 冒頭でも述べましたが、姿勢を保つ筋肉は、通常では30分までしかもちません。それ以上机に向かっていると、次第に姿勢が崩れ、悪い姿勢のままで机に向かうことになります。具体的には、最初は背筋を伸ばして座っていても、時間が経つにつれ腰が曲がったり、画面に顔を近づけるために首が前に倒れたりしてきます。不安定な姿勢では体を支えるために無理な力がかかります。重い体を部品と考えて、バランスの悪い体勢では力学的に無理な力が働くことは想像できると思います。バランスが悪いとプラモデルは倒れます。人間は、体が倒れないように、筋肉が引っ張って支えているのです。

 指を1本つかんで、それを手の甲の方に倒してみてください。どこかで痛くなるはずです。これは神経が警告を出し、無理な姿勢であることを伝えようとしているのです。このように、無理な体勢には警告を出す機能が人間には備わっているのですが、悪い姿勢が習慣化してしまうと、神経が警告を発しても、まひして機能しなくなってしまいます。そのため、常に腰を曲げた状態でも座れるようになってしまいますが、その代わり、知らないうちに体の内部では「小さなねんざ」が繰り返され、体を痛めているのです。それが腰の場合であれば腰痛になるのです。

傾向と対策その1:腰

 それでは各部位ごとに、どんな危険があり、どんな対策を取ればいいのかを見ていきましょう。

 なんといってもPCに向かう姿勢で一番悪影響が出やすいのが腰です。長時間だとどんな人でも知らないうちに腰が弧状(弓状)に曲がります。必ず一定時間ごとに席を立ち、腰を後ろに反って伸ばすようにしましょう。

 「腰が悪くて後ろに反ることなんてできない」と思う人ほど、腰や背中を反るようにしてみてください。もちろん、無理をしてはいけませんが。ウエストの後ろに手を当て、腰の部分を反るようにします。自宅で、うつ伏せになって手を付き背中を反るのもいいでしょう。

 以前は、腰痛になると腰を曲げたままにしていることが一般的でした。「腰を痛めたから」と、ふかふかのよいイスに包まれるように座る人もいました。しかし、これは場合によっては逆効果です。最近では腰痛対策は「反ること」の方が重視されています。反って、曲がった腰を正常の状態に戻すことが腰痛対策、腰痛予防になります。

 また、座っていて腰が曲がらないように背中にクッションを置くのもいいでしょう。ただし、背中の部分に当ててください。腰の低い位置に置くと、背中が曲がって効果はありません(図)。

イスにクッションを置くときは背中に

傾向と対策その2:肩と頭

 画面を見つめていると気付かぬうちに、腰だけではなく、背中から頭にかけても弧状に曲がっていきます(図)。視力が弱くて画面に近付いたり、ノートPCで常に視線が下に向いたりしていませんか? 人間の頭は意外と重いのです。個人差はありますが、体重の1割程度、約5〜7kgといわれています。ボーリングのボールのように重たいのです。これが首の真上に乗っていればいいのですが、前に傾いた状態になっていると、その重さを首や肩の筋肉が落ちないように引っ張っているのです。これが、肩こりや頭痛の原因となります。

典型的な悪い姿勢。頭、首、背中、腰で弧を描いてしまっている

 頭の位置は人間を横から見て、肩の端の骨と耳の穴を結んだ線が垂直であるのが理想です。これよりも前に倒れないようにしてください。頭が落ちないように、またはあごが出ないように、気を付けましょう。PCのディスプレイはイスに座った高さと同じか、少し低い位置にあるのが理想的です(図)。

肩の端の骨と耳の穴を結んだ線が垂直になるのが理想

 また、肩が上がっていても肩こりの原因となります。キーボードをたたくときに肩が上がっていないか気を付けてください。イスを高くしてみるのもいいでしょう。ただし、背が低い人ではあまりイスを高くすると、今度は足が床に付かなくなります。そうすると、太股は足という「おもり」をぶら下げることになり、圧迫されて血行が悪くなり、結果として太股がしびれたりひざが痛くなったりします。足が浮くなら下に台を置いてみてください。

傾向と対策その3:手首

 手首は甲の方が上がっていると、いくつかの神経に負担がかかり、悪化すると腱鞘炎になります。そのため、マウスは手首があまり上がらないようなものを選びましょう。ほかにも、マウスの持ち方を工夫したり、マウスを持つ手の手首のところに何かを置くのもいいでしょう。また、自分から遠い位置でマウスを操作しないことです。気が付くと手を伸ばしてマウス操作していることがありますが、ひじが曲がる範囲で操作しましょう(図)。

マウスを持つときは、手首がまっすぐになるようにする

 それからPC初心者だと、特にクリックが慣れるまでは緊張して肩などに力が入ってしまうことがあります。緊張すると肩こりになりますから、軽くクリックができるようにしましょう。

傾向と対策その4:目

 頻繁に更新されるチャートなど、激しく移り変わる画面を見ていると、目が付いていけずに疲れてしまいます。激しく動く画面はあまり見つめないようにしましょう。

 目は症状によって対処が異なります。充血していれば冷やす、目の奥が痛ければ温めます。充血していたら血行を抑えるために冷やします。奥が痛いときは緊張して血行が悪くなっているので、温めて血行を良くします。

サプリメントについて

 さまざまなサプリメント(健康補助食品)が出回っていますが、何が効果的でしょうか。もちろん栄養素は食物からとるのが理想的ですが、足りないならサプリメントから補給するのもいいでしょう。大量摂取しても余った分は排出されるようなもの(ビタミンCなど)は問題ありませんが、ほかのものはよく選びましょう。マルチビタミンのように手当たり次第飲むのではなく、何が必要なのか薬剤師や医師と相談して、自分の体に必要な要素をよく選んでからとるようにしてください。


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