第2回 ファイナンスの全体像保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください(3/7 ページ)

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.

 第1回では、決算書とコーポレート・ファイナンスの違いを「時間軸」で説明しました。今度はそれをビジュアルで説明したいと思います。

 それが決算書は「写真」でありファイナンスは「動画」である、というものです。

 決算書は過去の一時点における会社のスナップ写真ですが、ファイナンスは今、常に目の前で動いている物事に対応することが求められます。金利・為替・株価は毎日、いや毎分毎秒動いています。まさに目の前で動いて変化しているものに合わせて戦略を対応していく必要があります。

 そのためには、会社の状況を的確に把握し、どんな状況で何をすべきか、というシミュレーションを何度も行っておく必要があります。会社の状況把握には会計・決算書が役立ちます。しかし、シミュレーションの段階ではそれらは大して役に立ちません。ファイナンスに関する理論を理解し、それを何度も実践することで初めて目の前で動く変化に対応するファイナンス戦略の実行ができます。

 まさにそれは目の前で動いている生放送の動画を見ることに似ているのです。

決算書の大枠は「絵」で理解する

 決算書は読むものではなく利用するものだ、と述べましたが、具体的には会社の現状分析のために活用します。ただ、小難しい決算書をそのまま活用しようとすると頭が“凍って”しまいますので、まずは決算書の大枠を「絵」で覚えましょう。

 決算書の構図は非常に単純です。

 企業はモノを売って、費用を支払います。そして残ったものが利益になります。その売上、費用、利益がどのような状況になっているかを示すものが損益計算書(PL)と呼ばれるものです。「損益計算書」という言葉が5文字熟語の物々しいゆえにどうしても難しいものと思いがちですが、よく見ると難しい漢字は何一つ用いていません。企業の「損益」を「計算」する「書」類であり、その内容が文字通り示されているだけです。

損益計算書とは

 図5では一番左が売上高、一番右が純利益になります。純利益とは、国への税金も納めた後に残る「最後の利益」です。もうこれ以上支払う費用はなく、ここから株主への配当を支払います。

 この売上高と純利益の間にいくつかの階段が存在しますが、これは、企業に発生する費用をいくつかのグループに区分けして順番に売上高から差し引くことでこういう形となります。

では、どのようなグループに区分けするのでしょうか。それは、企業に発生する費用の種類を考えると自ずと答えが出てきます。

 企業がモノを売る際は、必ずモノの原材料が必要となります。

 お茶を作るメーカーで考えてみましょう。

 お茶を作って売るには、その材料となるお茶の葉と水を購入する必要があります。これらなくしてお茶メーカーは存在しえません。この材料となる費用を「売上原価」と言います。売り上げたモノの原材料費です。

 次にお茶を作るにも販売するにも人が必要です。また、工場やオフィスの賃料、配送費などもかかります。それらは作ったお茶を売って現金を獲得するために必要な費用であり、これは「営業費用」と呼ばれます。

お茶メーカーの利益が出る過程

 営業費用を差し引いた残りが「営業利益」です。営業利益は「お茶を作って販売する」という事業からいくらの利益を稼いだか、という本業から発生する利益を表しています(図6?)。

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