第2回 ファイナンスの全体像保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください(7/7 ページ)

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.
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 さて、純資産と時価総額の関係はわかりました。純資産の金額が大きくなれば、時価総額も高まります。株主はハッピー、株主に褒められて経営陣もハッピーです。

 では、どうすれば純資産の金額が高まるか、ということですが、利益を増加させれば純資産は増えます。詳細は置いておいて、ひとまず図解してみると図17のようになります。

 図17の右端の部分、配当を支払った後の将来の成長原資の部分が内部留保として図16の純資産に蓄積されていきます。損益計算書と貸借対照表はこのようにしてつながっているのです。

 これは私たちの家計で考えてみるとすぐにわかります。

 例えば給料が増えたとしましょう。月々の費用が変わらなければ、毎月末に手元に残る現金は増えます。現金が増えるということは、自分の純資産が増えることを意味します。企業に置き換えると、企業の収益状況がよくなり、利益が増えるとそれだけ会社の純資産が増えることになります。

 また、実際にはキャッシュフロー計算書をあわせた3つの財務諸表が連動することで企業の収益状況、資産状況、そして現金の出入りの状況を把握することができます。1つの財務諸表の変動がほかの2つの変動につながるのです。

 決算書を作成する立場になれば、その3つの決算書がどのように連動しているかを全て把握する必要があるでしょうが、一般のビジネスパーソンにとっては、エッセンスさえ知っておけば問題ないでしょう。したがって、本連載では決算書に関しては本当に必要最低限のことしか触れていません。興味あればどれか1つ決算書の解説本を手にとって見てください。どの本でも3つの連動を説明しているはずです。

 さて、利益を増加させるにはどうすればいいかと言うと、売上の増加と費用の削減が求められます。企業は決算書をもとに自社の状況を把握し、「この売上を他社並みに引き上げるにはどうすればいいのだ」「う?ん、ちょっと人件費をかけすぎたかも」など考えるのです。

 自社の状況を理解し、今後のさらなる成長のための事業プラン・戦略を作成してそれを遂行するには、ほぼ間違いなくお金が必要となります。そこで、「どれぐらいのお金をどうやって調達するか」が次にやってくる課題ですが、ここからがコーポレート・ファイナンスの領域です。ファイナンスの目的とは、決算書という「道具」で、次の戦略を練って「実行する」ことなのです。

 次回は、決算書を基に企業の現状を分析し、把握します。そしてその先には分析結果をもとに、どうやってコーポレート・ファイナンス戦略を立案し、実践していくかを見て行きます。

 →第1回 決算書は読めなくても大丈夫

※書籍を一部修正して掲載致しました。

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著者プロフィール:保田隆明

外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


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