商品から発生するぐっとの分類と、最近の例を挙げた。
“アイコンぐっと”:「ロゴタンブラー」「BICボールペン」「HACKED!」
“高機能ぐっと”:「XEL-1(ソニー有機ELテレビ)」
“美人ぐっと”:「資生堂マキアージュの新CM」
“新鮮ぐっと”:「JERO(演歌歌手)」
“舌鼓ぐっと”:「ひろ作」手挽きの蕎麦(ミシュランガイド東京★獲得店)
“ウィットぐっと”:「秋刀魚の携帯箸入れ」(ひとつぼ手づくり雑貨店)
“問答無用ぐっと”:「iPhone 3G」
高機能ぐっとは、圧倒される“ドきれいな画面”のような機能で心を奪われること"。美人ぐっとは美しい方々にひたすら目を奪われること。新鮮ぐっとは今までなかったような組み合わせの価値や表現、舌鼓ぐっとはその名の通りおいしさ、ウィットぐっとは“これおもしろい!”、そして問答無用ぐっとは、発売後3日で100万台を売ったiPhone 3Gのような圧倒的商品からくる。
タイトルや目次、序章で判断する書籍は“説明力ぐっと”で買う。バレーボール大会のようにマスメディア総力の商品は“資本力ぐっと”であるし、名前はあえて挙げないが“悪役力ぐっと”で再吟味されている女性タレントもいる。我々は「ぐっとくる」を無意識に受け止めているようでもあるが、必ずしも直感だけではなく、ぐっとくる意味を瞬時に処理もしている。
消費者はぐっとくるをどのように処理するのか。それは"ぐっとくる感覚器官"を動員して処理する。ぐっとを感じるからだの器官とその感覚を挙げよう。
「ニューロン」:脳内メモリーを呼び起こし、商品と体験をつなぐ“共感”
「額」:ハタとその意味に気付かされて額をぴしゃりと打つ“三つ目の直感”(注:手塚治虫の漫画『三つ目がとおる』の主人公にちなんで)
「頬」:おもしろさやユーモアで頬をゆるませる“頬弛感”
「首」:商品コンセプトやテイストを反芻してうなづく“納得感”
『肌』:肌で感じて自分のモノ! と愛でる“一体感”
いわゆる五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)とは、消費時点の商品との接点を表している。それに対して“ぐっと五感”は、商品コンセプトへの内面的な賛同や否定、葛藤を産み出す感覚器官である。
ぐっとくるという心理の分析、科学未満の代物というなかれ。オランダのユニリーバ社では「アイスクリームがいかにスマイルを呼ぶか」をテーマに、MRIスキャナーで脳内分析もしている。別の研究者は、ビデオに撮影した消費者の表情で深層心理分析をしている。ぐっとが科学的に解明される日も近いかもしれない。
従来の消費者モデルマーケティングは、消費者を“行動モデル”でくくる、現場ではありえないモデル作りにいそしんで迷路に入った。むしろ行動ではなく“ぐっとくる心理モデル”の探求が大切かもしれない。
一般企業ではスキャナーの研究はムリだから、せめてアンケートでぐっとな感覚を測定する項目を入れてみたい。「ウチの商品の何にぐっとくるのか?」「それはどの感覚器官なのか」仮説をもって聞いてみよう。たいていそこにコアコンピタンスがある。
さて筆者は、スタバのロゴタンブラーに脳内ニューロンを刺激され、ストローできゅっとされるように吸い込まれた。放心状態の中で、カウンターで「贈り物ですか? 自宅用ですか?」と聞かれて「自宅用に」と言った。そしてタンブラー購入時の「飲み物1杯無料の特典」をすっぽり忘れてしまった。ぐっとで損する消費者もいる。スタバさん、まだ未使用なのですが、今からでもザクロピーチのフラペチーノいただけませんか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング