リニモの遠隔管理をしている「運輸司令所」はどうなっているのだろうか。今回、特別にその様子を取材・撮影させてもらった。
運輸司令所は愛知高速交通が管理する施設の中にあり、ここからすべてのリニモの車両と駅をコントロールしている。司令所の室内には、常時3名の運輸司令が運行状況や駅の様子をチェックしている。壁面の大型スクリーンでは各駅と引き込み線の状況と各車両の位置が表示されており、脇には天候や風速、地震計などの情報を表示するインフォメーションモニターもある。リニモが駅に停車すると、ホームドアの作動情報を知らせるシグナルが光り、自動的に各所にある監視カメラの映像が自動的に表示される。カメラの映像はパッパッと切り替わり、運輸指令がその様子をチェックしていく。
無人運転・無人駅での運用を前提に設計されたリニモの運輸司令所は、路線すべての情報を統合的かつ合理的に管理しやすいように作られており、少人数でも安全に運行できるのだ。
愛・地球博と時を同じくして、先進的な「21世紀の交通システム」として誕生したリニモ。実際にその姿を見て、乗ってみると、確かにリニアモーターカーならではのメリットや楽しさを感じられた。現在、リニモが走る丘陵地帯はもちろん、最近見直しの気運が高まるトラムとともに、クリーンでエコな新しい都市交通システムとしての可能性もある。特に浮上式による騒音レベルの低さは、都市部で24時間稼働する“終電のない公共交通”を実現できるのではないかと感じた。
一方で、リニモには課題もある。
「リニモの最大の課題は、他地域に同じ規格の路線がないことなんです。車体や走行用モジュールがここでしか使われておらず、多くの部品が特注品になってしまう。例えば、HSSTやリニアモーターのコイルなどは、すべて職人さんの手作りなんですよ。多くの地域でリニモが導入されれば、(車体や部品に)汎用性が出ますし、量産効果も生まれてくるのですが」(江尻氏)
取材時、案内をしてくれた江尻氏がポロリと嘆息した。
未来の公共交通システムとして大きな可能性を秘めながら、ひとり孤塁を守り続けるリニモ。欧州の各都市がトラムで街作りを再生したように、リニモのシステムは日本の各都市を「交通・環境先進都市」にする上で貢献できないものだろうか。
リニアモーターカーの可能性は、リニア中央新幹線など「長距離・高速交通」分野だけではない。クリーンで静か、加減速や勾配に強いという特性は、都市向けの「近距離交通」分野でも応用の可能性がある。欧州でトラムが見直されたように(参照記事)、日本で再びリニモの可能性が見直される日が来ることに期待したい。
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