どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(後編)近距離交通特集(4/6 ページ)

» 2008年12月29日 16時39分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

なにわ筋線

 新大阪駅から南下し、中津、北梅田、福島、中之島、西本町、西大橋、JR難波駅を結ぶ路線、及び堀江から分岐して南海電鉄の汐見橋駅を結ぶ路線のこと。汐見橋駅からは南海高野線が乗り入れ、JR難波駅からはJR関西本線が乗り入れる構想がある。

 発端は1982年に大阪府と大阪市が共同で計画した路線である。しかし、どちらの自治体も財政が芳しくなく、一方で民間から計画を引き継ぐ声も上がらず、実際には運営主体さえ決まっていない。近隣に平行路線も多く、大阪市営地下鉄と共倒れになるという懸念もある。

 南海電鉄にとっては閑散区間の高野線汐見橋〜岸里玉出間を活性化するメリットがあり、新大阪駅始発の高野山・関西国際空港方面の特急列車設定も可能となる。しかし南海電鉄単体での建設はコスト面で難しく、自治体の建設参加は必須であろう。2008年11月の報道によると、大阪府の橋下知事は大阪府庁舎の移転問題に絡めて、梅田貨物駅跡地とJR難波駅とを結ぶ鉄道の新設を提案したとのこと。大阪府の積極的な働きかけがあれば着工されるかもしれない。

赤線が計画区間(筆者予想)、青線が南海高野線(通称汐見橋線) 地下化して位置を変更し、なにわ筋線と接続する案がある。緑線がJR関西本線

大阪市交3号線延伸

 大阪市営地下鉄四つ橋線を延伸し、阪急電鉄の十三駅に至る計画。梅田貨物駅跡再開発事業とともに実現へ向けて動き出している。十三駅からは阪急神戸本線が乗り入れる構想であったが、現在は阪急新大阪連絡線と一体化して整備する方針が有力である。阪急は十三−新大阪間の免許を持っている。

 大阪市は四つ橋線を延伸し、阪急電鉄の十三駅に接続。阪急神戸本線と相互直通運転を行う構想を検討しており、この構想が答申8号に盛り込まれた。ただし、両路線は軌間(線路の幅)こそ1435ミリメートルで同一であるものの、電化方式が異なる。四つ橋線は第三軌条方式という、線路のそばに電力供給用のレールを設置する方法で、阪急電鉄は架線集電式である。相互直通についてはどちらかの路線の電化方式を変えるか、両方に対応する車両を開発する必要があった。

 一方、阪急電鉄は阪急京都本線・千里線の淡路駅から分岐し、新大阪駅、十三駅を経由して、阪急神戸本線神崎川駅を結ぶ「新大阪連絡線」構想を持っていた。この構想自体は古く、1961年には事業免許を取得していた。また、東海道新幹線の新大阪駅は、阪急が乗り入れる前提で設計されていた。新大阪連絡線は阪急梅田駅の混雑を分散させる目的と、阪急沿線から新幹線へのアクセスを便利にするという目的があった。しかし実際には工事が進ちょくせず、阪急は8割の用地を確保した十三−新大阪を残して、淡路−神崎川の免許を廃止してしまう。

 しかし、この新大阪連絡線構想と四つ橋線延伸計画が結びつく。そのきっかけは2006年の阪急電鉄、阪神電鉄の経営統合だった。統合のめどが立った時、阪急ホールディングスの社長により両鉄道会社の展望が語られる中で、新大阪連絡線と四つ橋線延伸を一体的に整備する構想が披露された。8号答申では新大阪連絡線については触れられていないが、この発言により両者一体整備へと事態は動き始める。大阪市、阪急電鉄、国土交通省の3者により、西梅田−北梅田−十三の原案が策定された。建設主体は鉄道建設・運輸施設整備支援機構、営業は大阪市交通局と阪急電鉄が担うこととなった。

 2007年に大阪府、大阪市、阪急電鉄、JR西日本などが梅田貨物駅跡再開発の作業部会を発足させ、そこで路線案を再検討した。国土交通省近畿運輸局が2008年4月10日に発表した資料では、十三駅から阪急電鉄の既存路線に乗り入れる場合の費用は約2000億円、新大阪連絡線乗り入れは約950億円となり、西梅田−新大阪間の一体整備がほぼ決定した。今後は具体的なスケジュールの検討に入ると思われる。なお、同資料での参考例によると、運行本数は1時間あたり24本、一日あたり14万人の需要があると算出している。

赤線が四つ橋線延伸区間、青線が阪急新大阪連絡線構想

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