どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(後編)近距離交通特集(2/6 ページ)

» 2008年12月29日 16時39分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

北大阪急行延伸

 北大阪急行電鉄は千里ニュータウンと大阪万博の輸送を目的として、大阪府と阪急電鉄、関西電力、大阪ガスなどが出資して設立された第三セクターである。

 かつては万博輸送のための支線を有しており、それは万博終了後に廃線となり、跡地は高速道路などに転用された。建設費の償却を万博輸送の売り上げで実施するなどの計画が功を奏している。千里ニュータウンの発展とともに乗客数も好調に推移していることから、初乗り運賃は80円となっており、日本一運賃の安い鉄道として知られている。もっとも、大阪都心へ向かうためには相互直通している大阪市営地下鉄御堂筋線にも乗る必要がある。

 答申8号では、江坂駅から千里中央駅までを営業する北大阪急行電鉄南北線を、さらに箕面市へ延伸する計画が示された。予定地付近は箕面市船場において1970年代に大規模な団地が作られるなど、段階的な開発が行われている。本計画はその船場地域の住宅設備更新と、箕面新都心計画を推進する目的がある。

 北大阪急行電鉄南北線の延伸は、1985年の第三次箕面市総合計画に要望として盛り込まれた。1988年からは大阪府、北大阪急行電鉄、阪急電鉄、箕面市による基礎調査のための委員会が設置された。これを受けて、1989年には運輸政策審議会答申第10号において「北大阪急行線の延伸」が位置付けられた。1991年には「北大阪急行線延伸推進会議」が設置され、2004年には箕面市に「北大阪急行線延伸プロジェクト会議」が設置される。ところがその後の進展はなかった。

 しかし2008年の箕面市市長選挙で当選した倉田哲郎氏が市の交通網を発達させるため、北大阪急行線の延伸に取り組んでいく考えを示したことから、約20年ぶりに計画が動きそうである。この延伸が実現すれば、船場地区の団地建て替えを伴う大規模再開発にも好影響となるだろう。

赤線が延伸予定区間、青線が北大阪急行電鉄南北線

大阪国際空港広域レールアクセス

 阪急電鉄、JRの伊丹駅と大阪国際空港ターミナルを結ぶ軌道系アクセス計画。8号答申に盛り込まれたものの、関西新空港や神戸空港が開業するなどの要素があり、大阪空港自体の需要予測が不透明だったこともあって未着手だった。かつてはJRが福知山線を分岐させる計画もあったが実現には至っていない。

 ところが2007年3月の報道によると、兵庫県は伊丹市街と大阪空港をLRT※で結ぶ構想を発表し、調査費を予算化したとのこと。LRTが注目されて技術や法整備が整い低予算で建設できること、並びに神戸空港開業後も伊丹空港の人気は衰えず、関西圏の空の玄関として機能していることを考慮したとみられる。

※LRT……軽量軌道交通(Light Rail Transit)のこと。大型車両を用いる本格的鉄道(Heavy Rail)に対し、都市内やその近郊で運行される中小規模の鉄軌道全般を指す。

 LRT計画では市街地と空港を15分程度で結び、途中にも駅を設置。総工費は300億円程度を見込んでいるという。建設費は兵庫県と伊丹市が負担し、運行は民間が行う「公設民営方式」とする意向だ。

赤線が兵庫県のLRT構想(筆者の予想)

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