さあ“こだわり”を捨てよう! それが運用の弱点だから山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年01月29日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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運用に向かないのは「こだわりの強いタイプ」

 世の中には、こだわりが強い人とそうでもない人がいるが、どうにも運用に向かないのは、当然、こだわりの強いタイプだ。このタイプの人は、全体ではなく個別の投資対象の単位で勝ち負けにこだわる傾向があり、買値よりも値下がりしている銘柄を買い増しして平均買いコストを下げて何とかプラスに持ち込もうとする、いわゆる「難平(ナンピン)買い」を行う。逆に、儲けの出ている投資対象に資金を集中するような行動は、集中投資のリスクを取ることになりやすいし、「負けないため」には大きなリスクを抱えることになりやすい。

 この種のこだわりは、一面では性格的なものなので、矯正が難しいが、あえて1つだけ対策をアドバイスすると、自分の運用について他人と話すのを止めることだ。自分の運用について他人に話す状態をイメージすると、余計な言い訳を自分だけで考えたり(誰も聞きたくないのに)、自分の失敗に対する気まずさ、恥ずかしさのような感情がわいてきたりする。そうすると「純粋に、合理的に」という方向で考えることが難しくなってしまうことがある。

 もっとも「他人に話す」ということは、儲けた場合の大きな楽しみでもある場合が多く、これを捨てるというのは味気ないと思う人がいるかもしれない。また運用のように不確実性のあるゲームでは、他人の意見を求めたい心境になるのが自然だし、特に他人の同意は、本当はそれが役に立たないはずだと分かっていても心強いものだ。親切なアドバイスのつもりでも、このアドバイスの実行がまた難しいのかもしれない。

 行動経済学がまさに教えてくれるように、金銭的な損得の上で合理的な行動と、人間にとって自然な感情との間には、少なからぬ対立がある。だが、ことお金の運用を行う場合には、合理性の側に立つ方が得な場合が多い。実際、人間心理の弱点を巧みに突いた金融商品を買って損をしている人が多数いるし、「この方が気が済む」という風に自分の感情を甘やかしていることも多い。

 個人のお金の運用に戻ると、「自分の買値にこだわらない」ということが徹底できると、一生を通じて、かなり得になるはずだ。

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