コラム
» 2009年05月07日 07時00分 公開

出版不況を生き抜く、新しいビジネスモデルを考えよう郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

[郷好文,Business Media 誠]
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無収入モデルの時代

 雑誌不況も専門誌不況もその原因は数あれど、根本的には収入モデルが変化したことにある。Webやフリーペーパーの登場で、雑誌(が提供してきた情報は)もはやタダで手に入るようになっている。手芸書の命は型紙だが、それもネットで無料配布される。ダウンロードして、後は手芸店に走ればいい。雄鶏社は料理本にも進出していたが、料理レシピもネットで無料配布される時代。“無収入ビジネスモデル”の荒波を真っ向からかぶってしまっている。

 ほかにも原因はある。出版業自体のリストラの立ち後れだ。営業収入は書籍実売と印刷広告、販売のやり方も何十年も変化がない取次流通と再販制度、店頭での平場や棚取り営業。読者は変化しているのに、出版業の仕事のあり方は昔と同じだ。

型紙もネットで無料配布される時代だ

出版はリスクフリーか?

 「無料配布」「リストラの遅れ」「読者の変化」、衰退にはさまざまな要因があるため、解決策は1つではない。だが、環境の変化はチャンスでもある。参考になりそうなのは邦画業界。低迷時代が長かった邦画業界が復活したのはなぜか。それは「若手監督・脚本家の起用が成果を上げていること」「デジタル化により、低コストで撮影・配給できること」「ミニシアターという発表の場が増えた」ことなどがある。作品の質が高いから観客も付いてくる。

 対照的に出版業のリスクを取らない姿勢が気になる。「出版とは何かがあった結果が本となるもので、きっかけにはならない」と、ある編集者が言った。消費者が本を買う理由には、「事件」「肩書き」「実績」の介在する面が大きいというのだ。功成り名を遂げた人が書く『わたしの履歴書』がその象徴的な存在だ。海外のベストセラー版権もお墨付きだ。だから、私のように名もない著者は相手にもしてくれない(笑)

 でも、それでは前例踏襲主義の役所みたいだ。もっと新人著者に門戸を開き、発掘の仕組みを作ればいいのに。書きたいという欲望は根源的なものだから、タマゴはそこかしこにいる。それを流通に載せる、低コスト制作・直販流通網を作るベンチャー出版社は出てこないのだろうか。

本屋はつまらん!

 一方、本屋がつまらないのも売れない原因のひとつだ。

 もはや本屋は“目的買いの場”になりさがった。Amazonや書評などでチェックした本を、「店頭で現物確認する場」が本屋だ。品揃えの主導権をネットや流通に握られている。「買いたい!」と思わせるほどPOPに工夫のある書店、独自の選書眼のある書店はまだ少数派である。だから書店をぶらりと歩いても、知的好奇心でムラムラすることがなくなった。「棚と平場の場所貸し業」では、衰退する百貨店と同じ運命をたどる。

 Amazonのカスタマーレビューに習い、「読者参加の場」を作ったらどうだろうか。その道の目利きをアドバイザーに起用し、専門書や趣味本コーナーの編成を任せる。編み物のベテラン、お菓子づくりの鉄人、昆虫博士、鉄男に鉄子、自転車狂、文具の達人。売り手よりもお客さんがずっと博学だ。たぶん、「タダでも売場づくりをしたい」という人はたくさんいる。

 出版業も本屋も商売ではあるけれど、どこかしら文化を担っている。だからその栄枯盛衰ぶりは、その国民の文化バロメーターである。しかし、商売である限り文化庁の保護は受けられない。1人1人の知恵で、この状況の歯止めをしなければならない。

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