『週刊文春』も危なかった……『週刊新潮』の大誤報を笑えない理由集中連載・週刊誌サミット(4/4 ページ)

» 2009年05月27日 08時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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『朝日新聞』と『週刊朝日』は、犯人が誰かを知っている

 当時の『週刊文春』の編集長は花田さんで、非常に度胸のある人だった。(花田さんは)この記事は売れると思って120万部も刷っていた(笑)。ふだんは60万部ほどしか刷っていないのに120万部も刷って……どのようにして記事を書くのを止めればいいのか、と思った。

 男が警察に出頭したという事実があったので、それを書くという手もある。しかしいろんなことを考え、「やはりこれは誤報にあたる」と判断して、引いた。つまり我々は、ギリギリのところで『週刊新潮』にならずに済んだのだ。しかし『週刊新潮』は結果的に、拙劣(せつれつ)な記事を書き、その後の流れもよくなかった。

 現実問題として、(10人ほどの)チームを組んで取材に時間をかけることが、メディアの中でどんどん難しくなっている。それが何を引き起こすかというと、結局、読者の方が損をしてしまうのだ。

 読者の方には「知る権利」がある。私らはすぐに「言論の自由」と言うが、言論の自由というのは本当のことを言うと「メディアにしか自由はない」と思う。そういう意味で、言論の自由というのは業界の議論でしかない。いずれにせよみなさんが知りたいと思うことに対し、(メディア)は応じられなくなっている。今のメディアの状況で、思い切って書くのは週刊誌しかない。しかし思い切って書くには裏付けが必要なのだ。

 『週刊新潮』は最後のところで失敗を犯したと思うが、あの問題を「一生懸命やろう」とした姿勢は評価してもいいのではないか。もちろん、あとのことは全く別問題だ。また『週刊新潮』に対して、各メディアは厳しい攻撃をした。『週刊新潮』が攻撃されるのは仕方がないことだが、本当に大切なことは「赤報隊(朝日新聞の記者を襲撃した)の犯人は誰なのか」――これを追及することだと思う

 『週刊文春』は警察庁の最終報告書を入手して、記事にしたことがある。(最終報告書によると)いくつかのグループに本当に絞り込んでいる。しかし政治的な事情があって、それ以上は(警察も)踏み込めないのだろう。その取材をした記者は今、『週刊朝日』の山口編集長のところにいる。なので『朝日新聞』と『週刊朝日』は、犯人が誰かを知っていると思う。私の後輩や他のメディアの人たちは度胸を持って、赤報隊の犯人を名指すという記事で、読者の信頼に応えてほしい。

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