欧州有数の国際空港、フランクフルト空港の環境マネジメント(前編)松田雅央の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年10月27日 12時23分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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騒音対策に注力

――環境課題の中で特に注力している分野は何ですか?

課長 代表的なのは騒音です。フランクフルト空港では1960年代から継続的に周辺の騒音を計測し対策を講じてきました。

――具体的な手法は?

課長 航空機の進入コースと発進コースは複数あり、なるべく人口密集地を避けて設定するのが基本です。また、進入時の降下角度と発進時の上昇角度により地上の騒音は違ってきますから、最適なコースの設定が求められます。以前は「騒音対策に最適でも飛行機の性能の限界から飛べなかった」ようなコースが、技術の進歩とともに可能となってきました。

 もう1つ、航空会社に対する働きかけも行います。フランクフルト空港は騒音を含めた環境対策に資金を拠出しており、それは基本的に空港を利用する航空会社が負担するものです。環境性能の高い航空機に対しては負担を低く、逆に環境性能の低い飛行機に対しては負担を重くして、環境性能の高い機体の利用をうながしています。

――不況の中、航空会社にとっては重い負担ですね。

課長 求められる環境対策のレベルは常に高まっていますから、拠出額は4000万ユーロ(2008年)から5000万ユーロ(2009年)へと上昇しています。どういう航空機を用い、どれだけの費用を負担するかは航空会社の考え方次第。努力によって削減可能な経費でもあります。

フランクフルト空港周辺の進入・発進コース(出典:Umweltbericht 2008)

目指すのは交通結節点

――飛行機は列車と競合関係にあり、環境保全の観点から列車の利用促進を主張する人もいます。

課長 まず「競合関係」は正確な表現ではありません。飛行機は単独で存在できる交通機関ではなく、公共交通や自家用車があってはじめて機能するものです。フランクフルト空港の鉄道駅とバスターミナルには1日400便もの列車とバスが発着しており、それらと飛行機が機能的に融合した「交通結節点」が空港の将来像です。

 確かに、短距離の移動に飛行機は向きませんが、長距離になるにつれ経済と環境に関する優位性は高まります。大陸間を短時間で移動する手段は飛行機しかありません。移動距離300〜500キロ以下は列車をはじめとする公共交通、それ以上は飛行機の利点が大きいでしょう。また、飛行機が必要とする交通インフラは空港だけですが、列車は広大な線路を必要としますので、列車の環境負荷が低いとは一概には言えません。

フランクフルト空港の鉄道駅(左)、発進許可を待つ航空機(右)

 次回は2011年の部分開業を目指す第3ターミナル(エコターミナル)と、省エネ、二酸化炭素排出削減の取り組みについてさらに話を聞いていきたい。

フランクフルト空港データ

開業:1936年

総面積:1940ヘクタール

ターミナル数:2(第3ターミナル計画中)

離発着数:48万6000回/年

総就労者数:7万1000人

収入(2008年):21億ユーロ

関連会社数:500社

空港運営会社:Fraport AG(フラポート株式会社)

従業員数:1万9000人

乗降客数(2008年):5350万人(前年比−1.3%)

貨物取扱量(2008年):2095万トン(前年比−2.5%)


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