「ニュー」で「ハーフ」な時代をどう生き延びるかそれゆけ! カナモリさん(3/3 ページ)

» 2009年12月16日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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バリューラインを超えろ

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 好調な商品を見ても、しっかり「ニューノーマル」対応している。分かりやすいのが、今さらながら「餃子の王将」だろうか。

 「人気のファミレス、ベスト3は「サイゼリヤ」「餃子の王将」そして……」(Garbagenews.com2009年12月01日)

 マイボイスコムのネット調査の結果、1位は「ガスト」。ただし、「最もよく利用する」以上に、「今年利用が増えた」の対比では「餃子の王将」の伸びが目立つ。

 価格と価値が正比例した関係を「バリューライン」と言う。「安かろう・悪かろう」から「高くて・いいもの」の関係だ。「ニューノーマル」になった消費者の支持を集めるなら、そのバリューラインを超えなくてはならない。「王将」は価格が安くて、味は最高ではないものの結構イケルという、典型的な「グッドバリュー戦略」だ。ガストは「安いなり」の「エコノミー戦略」であくまでバリューライン上である。ゆえに、現状「最もよく行く」店ではあるが、「今年利用が増えた」の割合が低くなっている。

代替されない商品をメインに

 「ニューノーマル」な暮らしの中では、当然消費をおさえられるところは切り捨てる。もしくは代替される。例えば、何げなく毎日買って飲んでいるペットボトルの飲料。ミネラルウオーターなら100〜120円ぐらい。お茶や清涼飲料なら150円が相場だ。1日1〜2本買っているとして、日数をかけると、馬鹿にならない金額になることに、みんな気付いている。

 だから、水は水道水を浄水してマイボトルに入れる。お茶は茶葉やティーバックでいれる。その結果が、ミネラルウオーター市場前年比6.1%減というデータに表れている。

 「勝ち組『ゼロ飲料』、負け組『ミネラルウオーター』――2009年飲料市場」(Business Media 誠12月3日)

 「ゼロ飲料」はオイシイ(甘い)炭酸なのにゼロカロリー※という理由で、今までカロリーを気にして茶系飲料を飲んでいた人を取り込んで成長した。その後押しもあるのだろうが、炭酸飲料市場が5.4%増と今も買われているのは、そもそも「炭酸は自分で作れないから」だろう。

※ゼロカロリー……栄養表示基準では飲料の場合、100ミリリットル当たり5キロカロリー以下だと、ゼロカロリーと表示できる。

新たな価値で自社に取り込め

 「代替されない」以外のキーワードを考えるなら、「新たな価値創造」だろう。

 日経MJヒット商品番付にも登場し、以前このコラム上で「イケメン四天王が狙うのは誰だ?」と紹介した「資生堂UNO FOG BAR」。

 「“ポストワックス”狙う『ウーノ フォグバー』登場、ヘアスタイリング剤の勝者は?」(日経トレンディネット2009年11月19日)

 妻夫木聡、小栗旬など豪華「イケメン四天王」のCMもさることながら、ワックスのベタベタさをなくした商品は画期的。発売2週間で200万本を出荷したという。その良さは使えば分かる。新開発した水溶性の整髪成分が配合されており、髪1本1本を互いに吸い付かせていて、髪の毛を束に固めないので、何度でも手直しできるのが特徴、霧状なので髪全体に均等にスプレーでき、ワックスの弱点であるべたつき感や重さ、洗髪のしにくさをカバーしたといいことずくめである。

 ただし、ワックスほど強力じゃない。髪を大胆に「盛」ったり、「エアリー」(古いか?)にしたりはちょっとしにくい。ナチュラルっぽくなる。そのお手本のヘアスタイルを、CMで「イケメン四天王」がやっているのだ。つまり、スタイル提案をしつつ、新たな価値を訴求している。

「反動的需要」を取り込め!

 何事も行きすぎると「反動」が出る。健康ブームやメタボ撲滅。さらには昼食費の削減と、「食」はどんどん地味になっていく。でも、それも「ハーフ」だし「ニューノーマル」としては致し方ない。と、思えない人もしっかりいるのだ。

 「1食1800kcal越えも!“あぶら料理専門”レシピ本発売」(東京ウォーカー11月27日)

 本の中身は「ガーリック&バターしょうゆステーキon the ライス」や「満腹マヨ玉ツナグラタン」、「ミックスフライソースカツ丼」に「羽付きラード餃子」など、全ページ、バターやラード、マヨネーズ、生クリームなどをた〜っぷりと使った“高カロリーメニュー”が並ぶという。

 需要があるから、本にまでなる。例えば、都内では「全席喫煙可」の喫茶店などが人気を集めているのも一例だ。マイノリティ需要を取り込むことも、この時代の生き残りには重要である。

 実は今回のネタは、ここ1週間の間にネット上に掲載された記事を集めたものだ。それを、「ハーフエコノミー」と「ニューノーマル」というフィルターで見たのである。売れる商品、顧客が集まる商売は、きちんと時流をとらえている。今回紹介した例はほんの一部にすぎないが、「ハーフ」を前提にした「ニューノーマル」な戦略が求められているのは、間違いない。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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