これは実話ではあるが、妄想でもある。昨年暮れ、仕事場近くのJRの高架下に新しく“おウチ”ができた。四角く囲んだ段ボールでできている。上手に作られてはいるが、この寒さの中、さぞキツいだろう。新参者はどこからきたのか、リストラだろうか、一家離散したのだろうか……。
年明けのある夜、私はその高架をくぐり帰宅の途についた。すると、段ボールのおウチのそばに若い女性が1人立っていた。ベージュのロングコートに黒いロングブーツ。ロングヘアの美しいシルエットの人。横目に見ていると、彼女は細身の手袋をはめた手で、段ボールの“入口”とおぼしきフタを開けて、のぞきこんだのだ。
私は息をのみ、通り過ぎてから振り返った。まだ、そこに彼女はいた。無言で中を見ていた。私は思いつくあらゆる物語を数秒間のうちにめぐらせて、立ち去った。
それから1週間ほど後の土曜日のこと。おウチの上に“枕”があった。住人がどこかで調達してきたのだろうか。それを虫干ししているのだろうか。だが高架下に陽は当たらない。しかもよく見ると、枕カバーがなぜだか真っ白でとても清潔なのだ。
まさかあの女性が……? 平成大不況の最中、そんな“おウチLOVE”もありえるのか? 思えば、愛の支援がバレンタインの本質。寒い中、温かいバレンタインデーをおくりましょう。
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