いったいどれが自分? 「“これも自分と認めざるをえない”展」(4/4 ページ)

» 2010年08月23日 08時00分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム
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 いろんな方向から「自分って何なんだ」「属性って何だ」ということを考えさせられてきて、最後に出てくるのがこの体験。東京藝大の赤川智洋氏と佐藤雅彦氏が手がけた「佐藤雅彦さんに手紙を書こう」という作品。手紙を書くと、自分の筆跡で自分あての手紙が届くのだ。

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 これは、佐藤氏が某アーティストからもらった手紙の文字を組み替えて返事をした、というエピソードから生まれた作品。その人は自分の筆跡で書かれた佐藤さんからのメッセージにひどく驚いたらしい。自分の属性に対して敏感か無頓着であるか、それには個人差がもちろんある。

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 「属性に無頓着な自分、それに執着する社会」

 最後まで結局「属性」って何なのかは分からない、というよりも展覧会を見る前よりも頭の中はぐっちゃぐちゃにかき混ぜられてしまっている。これでいいのだ。会場には、全部で22の作品が展示されているが、説明を読んでしまうと面白さが半減してしまう作品もある。楽しみ方としては、最初は何も読まずひとまず全部体験してみて、1つ1つ振り返ってもう一度見るのがよいだろう。いずれにしても、体験型展示が多いので、人が少ない曜日や時間帯を狙っていくことをお勧めする。

 映画「ブレードランナー」の舞台は2019年、もうあと10年を切っているのである。近未来を描くSF映画は必ずしもハッピーエンドばかりではない。監視社会や管理社会、個人の属性と社会、虚構と実体、プライバシーとセキュリティ、溢れる情報と孤独……。この展覧会では、最先端のテクノロジーによって明らかにされるさまざまな事象をただ体験するだけではなく、そういった「属性」と「自分」との関係、さらに「社会」と「自分」との関係を考え直して、もやもやとした気持ちを胸に会場を去る。その、もやもや度を計る機械がどこかにあったら面白いのに。11月3日まで。

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“これも自分と認めざるをえない”展

21_21 DESIGN SIGHT

東京都港区赤坂9-7-6 tel.03-3475-2121

開催中〜11月3日(水・祝)

Open.11:00〜20:00(入場は19:30まで)

火休(11月2日は開館)一般1000円


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