なぜ待機児童は減らないのか?――JPホールディングスが保育事業に参入した理由嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(5/6 ページ)

» 2011年01月14日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

学校や保育園がモンスターペアレントを育てている

 こうした利用者目線に立った保育園経営は園児やその保護者から支持されているだろうが、昨今大きな話題になっているモンスターペアレントの問題は発生していないのだろうか?

 「弊社では全国の保育園で5700人ほど、児童館や学童クラブまで入れると8000人ほどのお子さんをお預かりしています。しかし、社長である私が出動しなければいけないようなケースは年間1件あるかどうかという程度で、いわゆるモンスターペアレントの問題はほとんど生じていません」

 とは言っても、どんなに立派な教育をしても、いかにすばらしいサービスを提供しても、モンスターペアレントは出現するかのごとく世の中では言われているが……。

 「いえ、それは違うと思います。モンスターペアレントは、学校や保育園が育てるものなのです。企業を悩ませるいわゆるクレーマーも同じことです。企業がクレーマーを育てているのです。最初からモンスターペアレントやクレーマーだったという人は、ごくごく少数です。それなのにモンスターペアレントやクレーマーが育っていくのは、学校や保育園、あるいは企業がいい加減に対応し、平気でうそを言い、ごまかしてばかりいるからなんです」

 では、そうしたモンスターペアレントが育たないようにするために、山口さんは保護者に対してどのように対応しているのだろうか?

 「毅然と対応することが大切だと考えています。もし被害を与えたのなら、逃げずに、きちんと対応する。しかし、だからといって、お客さんの奴隷になってはいけない。

 例えば、保育園内で園児同士がぶつかって、片方の子が軽いけがをしたとしましょう。お子さんがけがをして痛かったことについては謝ります。でも、けがをしたそのこと自体に関しては謝りません。

 また、以前こんなことがありました。あるお子さんが保育園から帰ると39度を超える高熱を出していたということで、その保護者の方が保護者会で保育園の責任を激しく追及されたのです。要するに『保育園の過失によって子どもが高熱を出した。だから責任を取れ』ということですね。しかし、私たちから見ると、帰宅後ずいぶん経ってから発熱したことは明らかでした※。

※JPホールディングスの運営する保育園では子どもが37.5度以上の発熱をした場合には、直ちに保護者に連絡し、園が子どもを預かるか、保護者が迎えに来るか相談をすることになっている。

 私はその保護者の方にこう言いました。『ちょっと待ってください。もし、保育園で高熱を出したのであれば、お母さまが迎えにいらしてお子さんを抱きかかえた時点で、母親として当然そのことにお気付きになるはずですよね。ところが、帰宅後ずいぶん経ってからしか異変に気が付かなかったのだとすれば、それは母親失格なのではありませんか?』と。すると、その場にいた保護者の方々から拍手が起こったのです」

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