コラム
» 2011年04月06日 08時00分 公開

日本はどこに向かうのか? 政府は震災後の青写真を示すべき(2/2 ページ)

[三宅信一郎,INSIGHT NOW!]
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日本国民が政府に求めているホールプロダクト

 今、日本国民は政府に対してどんなホールプロダクトを欲しているのでしょうか? 筆者の勝手な考えで以下のようなホールプロダクトをデザインしました。

 コアプロダクトは、マズローの欲求五段階説で言われる「欠乏欲求」である安全の欲求からきています。行方不明者の救助と放射能汚染の拡大を食い止めて原発を安定した状態にし、津波や地震の二次被害から解放され、ライフラインが復旧し、当面の衣食住が満たされた安全な環境の提供などであろうかと思います。

 期待プロダクトは、その上で日本全体の電力需給不足や物資の偏在を解消すべく十分な発電供給能力や流通・物流網の回復がなされ、製造業も生産再開を開始する状態、いわば安心できる環境の整備・提供でありましょう。

 拡張プロダクトは、その上で日本の産業・経済・金融状況や国民生活が震災前の状況に復帰し、海外から観光客や資本、ビジネスマンなどが多く戻ってきて、活況を呈することではないかと思います。

 理想プロダクトは、この震災から日本全体が世界と一緒になって一致団結して見事復興し、その経験やノウハウ・知見を生かして、震災や津波災害、次世代エネルギー政策などの分野を中心に世界の平和と安定に貢献し、尊敬と信頼を得る国になることです。

 さて、マーケティングでは、このホールプロダクトをデザインし、発信すればそれで終わりではなく、時間とともに市場が推移していくにつれて、それぞれ4つのプロダクトを市場に出していくタイミングを検討しなければなりません。タイミングを間違えると、ホールプロダクトは市場から受け入れられません。

 まず、最初のコアプロダクトは初期市場に提供され、その対象は通常極めてセグメンテーションされた狭い市場セグメントのピンポイントの顧客に対して集中的に提供します。今回の地震の場合、被災地への集中提供となります。

 その後、市場が時間とともに推移し、メインストリーム市場と呼ばれるマス市場に移行するにつれて、提供する顧客の対象領域を広げて、ホールプロダクトの層を外側に拡大していきながら提供します。

 今回の場合、期待プロダクトは首都東京を含む東日本地域の市民と企業群となり、拡張プロダクトは日本国民全員であり、最後の理想プロダクトは日本の復興と世界の安定を願っている全世界の国々の政府や組織、人々となります。

 もちろん、個別の具体的なソリューションは、さらに顧客の属性(年齢や企業規模など)によってセグメンテーションされなければなりません。

 ここで1つ重要な点は、初期市場とメインストリーム市場の間にはキャズムと呼ばれる大きな溝が存在しており、初期市場で成果をあげることができなかったホールプロダクトは、キャズムという奈落の底に転落してしまい、そのホールプロダクトはメインストリーム市場に移行できずに、そこで終わりとなってしまうという点です。

 従って、今回もコアプロダクトをいかに的確に震災現場に提供し成果をあげられるかどうかが、今後のホールプロダクトの戦略に大きく影響を及ぼすことを理解する必要があります。

 ホールプロダクトという呼び名でなくても結構ですから、日本政府には今後日本が歩んでいく道筋とその先にある姿を、国民や世界に一刻も早く提示いただきたいと思います。(三宅信一郎)

※参考文献:ジェフリー・ムーア著『キャズム』(翔泳社刊)

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