インタビュー
» 2011年08月03日 10時15分 UPDATE

新連載・突撃! となりの専門家:地震は怖い、だから私は地震を学ぶ――「地震」キュレーター 大木裕子 (2/2)

[島影真奈美,Business Media 誠]
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寝ても覚めても地球が大好き。でも地震はこの世で一番怖いもの

Business Media 誠 もともと、どのようなきっかけで「地震」に興味を持たれるようになったんですか。

大木 中学の理科の授業で「地震というのは地面が波打つことなのよ」と説明されたとき、固い地面が波打つってどういうこと!? と思ったのがおそらく、最初のきっかけですね。しかも、理科を担当していたのは女の先生だったんですが、「地震にはP波とS波があって、P波はこんな風に……」と、体をくねらせながらジェスチャー付きで説明してくれました。先生の動きの面白さはもちろん、固いと思っていた地面がそんな動き方をするという不思議さに、すっかり夢中になってしまったんです。

 もともと、子どものころから地球そのものに興味があり、その動きを物理や数学で表せるという点にもときめきました。

Business Media 誠 「地球そのものに興味があった」というのは……?

大木 例えば、海に遊びに行っても波を見るのではなく、波に浸食された地層を見るのが好きな子どもだったんです。どうして場所によって地面の色が違うのか、地面を掘ったら何が出てくるのか……ということに興味があった。自分でも、どうしてそんなことに興味があったのかよく分かりません(笑)。

 物心つくころには地球が大好きで、愛読書は地球の図鑑。高校生になるころには将来は地球科学関連に進むと決めていた。それ以外の選択肢は考えていませんでした。

Business Media 誠 かなり早い時期に「やりたいこと」を明確にされていたんですね。

大木 地球に興味がある一方で、地震に対しては激しい恐怖心を抱いていました。祖母が関東大震災を経験していて、その当時の話を聞いたせいかもしれません。私にとってこの世で最も恐ろしいのは地震で「地震を予知して逃げたい」「家族や友人、大切な人たちを地震から助けたい」という思いは昔から強かったですね。そういえば、周囲を見渡しても火山や地震を研究している人たちのなかには「助けたい」という思いを持っている人が多いような気がします。

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Yahoo!地震情報を定期的にチェック! 当たるのは必ず一次情報です

Business Media 誠 定期的にチェックしている情報源はどのようなものですか。

大木 震災以降は毎日、朝昼晩の最低3回、Yahoo!の地震情報をチェックしています。気象庁は震度3以上でないと震度速報を出しませんが、Yahoo!地震情報は震度1以上の地震がすべて載っている。日本付近の地殻構造は大抵頭に入っているので、震源の位置が分かれば、どういうタイプの地震なのかだいたい見当がつきます。

 週末には気象庁など各研究機関のリリースを読み込みます。またその週にあった報道で、あいまいな部分はがあれば、情報源をたどりに行きます。さらに、どこかで研究発表会などがあるときはできる限り足を運ぶようにしてますし、昔の知識を更新するために毎日本も読んでます。

Business Media 誠 情報収集される上で心がけていることは?

大木 必ず一次情報を確認するということですね。気になるニュースは、その見出しだけで判断するのではなく、必ずその“元情報”を調べます。信頼できる先生方の名前でコメントが掲載されていても、たいていは全文ではなく、抜粋です。メディアは一般の人にも分かる部分のみを取り上げますが、カットされた周辺情報こそが重要というケースも多いんです。

Business Media 誠 ちなみに「ゆれくるコール」などの地震予測アプリは使われていますか。

大木 スマートフォンを持っていないんですよ。普通の携帯電話は持っていますが、よく置き忘れてくるのであまり役に立たないんです(笑)。しかも私は情報と向き合うとき、その情報の正確さや可能性など「情報の先にあるもの」を調べてしまう。情報機器として携帯電話を使うには、あまりにも不向きですよね。

Business Media 誠 ONETOPI関連の調べものにはどれくらい時間がかかっていますか。

大木 特に大きな地震がなければ、週末にまとめて1週間分の情報を調べています。ただ1〜2時間で終わるということはないですね。自分の持ちネタをただひたすら出すだけであれば、すぐできるんでしょうけど、見つけた情報を調べて精査し、取捨選択して……とやっていると、気付けば3〜4時間たっているということもしばしばですね。

Business Media 誠 情報発信する際に心掛けていらっしゃることは?

大木 現在、ONETOPIで発信している情報は主に2種類あります。1つは、一般の方にも知ってほしいのに、報道があまり取り上げない研究機関のリリースなどのトピック。もう1つは、地球科学の話です。私自身、ぜひ知っていただきたいと考えているんですが、つい熱が入ってしまって時折、専門用語をそのまま書いてしまって、読者の方から「分かりません!」とお叱りをいただくことも。あわてて補足説明することもあって、まだまだ修行が足りませんね(笑)。

Business Media 誠 読者の反応など手応えとしてはいかがですか。

大木 皆さん、リアルタイムの情報がお好きですよね。地震の直後に、おそらくこういうタイプの地震でしょうと解説するといったつぶやきはバ―ッと広まる。でも、地球科学の見識を深めるようなネタはそれほどリツイートで広まるということはないですね。まだまだ地球科学は遠い存在なのかもしれません。

 でも、せっかく地球に生まれ、地震・火山のおかげでできたこの風光明媚な日本に住んでいるからにはもっと地球の面白さを知っていただきたい。日常生活が、どれだけ地球の恩恵を受けて成り立っているかに気付いていただきたい。私は研究者でもなければ、地球科学の素人でもありません。そんな中間的な立場であるからこそ、できることはたくさんあると思うし、人生を通してやっていきたいとも考えています。そのために、まずはこのONETOPIで地球を身近に感じられるような情報を発信していきたいと思います。

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ONETOPI「地震」キュレーター:大木裕子(おおき・ゆうこ)

東京大学地震研究所出身。コンピューター雑誌や医学専門書などの編集者を経て、現在は中小企業診断士という異色のキャリアの持ち主でもある。3・11の地震当時は職場にいたが、逃げまどう同僚を尻目にPCの前で地震の原因を必死にリサーチ。「自分の“地震ヲタ”ぶりにあきれました」と笑う。お気に入りのONETOPIトピックは「ディズニー」。大木さん曰く「そのトピックのキュレーターは高校時代の水泳部の先輩なんです。マニアぶりを見るのが楽しくてつい見てしまいます」

Twitter:@jishin_1topi 


ONETOPIとは?

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「情報通を友達に 知りたいことをシンプルに」をキーワードに、特定のトピックに詳しい「キュレーター」が、広大なネットの情報から重要なものだけをタイムリーにお届けするメディア。2009年からスタートし、現在100を超えるトピックを用意。スマートフォン向けアプリもリリースしています。

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