アニメ『らき☆すた』のオープニングに登場したことから、ファンが聖地として巡礼するようになった埼玉県久喜市(旧鷲宮町)の鷲宮神社。
アニメ放送終了後も、鷲宮町商工会が中心となり、声優を招いたイベントやスタンプラリー、グッズ展開などを行ったことで認知は拡大。正月三が日の初詣客は、アニメ放映前の2007年は13万人だったが、2008年30万人→2009年42万人→2010年45万人→2011年47万人と大幅に増加。地元に与える経済効果も大きく、鷲宮商工会では20〜30億円と試算している。
初詣客の多くは『らき☆すた』ファンというよりは、イベントなどを機に鷲宮神社を再認識した一般の人々なのだが、この拡大傾向はどこまで続くのか。2009年、2010年と鷲宮神社で年越しした筆者だが、2011年もその様子を見に行くことにした。
→『らき☆すた』の聖地、鷲宮神社で初詣をしてきた(2010年元旦)
→今年はテレビも来たぞ、『らき☆すた』聖地の鷲宮神社へ初詣に行ってみた(2011年元旦)
鷲宮神社に行く前に……実は同じく埼玉県を舞台としたアニメで2011年、非常に人気が出た作品がある。フジテレビで4月から6月まで放送された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、通称『あの花』である。
登場人物は、小学生のころ仲良しだった同級生たち。高校生になった彼らの心は離れてしまっていたが、1人の女の子を中心に友情を取り戻すという物語である。ZONEの名曲『secret base 〜君がくれたもの〜』が作中で印象的に挿入されたことでも話題となった。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の舞台は埼玉県の秩父市。そして、『らき☆すた』の鷲宮神社と同様に、“聖地”として寺社が含まれている。しかも、それぞれがアニメを中心とした町おこしに取り組んでいるということで、大みそかに秩父の寺社、元旦に鷲宮神社に参拝という二年参りを行いながら、両地域の取り組みを見ていくことにした。
秩父市があるのは、埼玉県西部。池袋駅から西武線に乗り、特急でも2時間ほどかかる距離である。都心から1時間ほどで行ける鷲宮に比べると、ちょっと遠い。
大みそかの10時ごろに都内の自宅を出て、電車を乗り継いで昼過ぎに西武秩父駅に着くと、『あの花』のビジュアルがあちこちで見られることに驚く。駅のポスターになっているだけでなく、駅前の仲見世通り商店街でも関連グッズが売られていたり、商品説明のPOPにも活用されているのだ。
こうした活動の中心となっているのは秩父アニメツーリズム実行委員会。2011年10月に行われた東京国際アニメ祭2011で委員会の担当者が話したところによると、『あの花』がきっかけで秩父市を訪れた観光客は10月までにのべ8万人以上。放送開始からの半年で1日平均450人ほどが訪れたことになる。
とはいえ現地で店の人の話を聞くと、アニメ放送直後の夏には訪問者は多かったものの、最近は減少傾向にあるという。
まずは作品中で、登場人物たちの溜まり場となっていた札所17番の実正山定林寺へ向かう。定林寺は15世紀に建立された由緒ある寺なのだが、納経所は『あの花』のポスターで埋め尽くされていた。遠目に見ると、納経所には見えないのではないかと思う。アニメ放映前は1日数人の巡行者が訪れるだけだったが、放映後は若者であふれかえるようになったそうだ。
販売物を見ると、製作委員会のANOHANA PROJECT認可のもと作られた絵馬やカレンダー、マウスパッド、メガネ拭きなど、寺とはちょっと関係なさそうなグッズも多く並んでいた。
近くにあった絵馬掛けには、アニメキャラクターを描いた絵馬が多く奉納されている。こうしたいわゆる“痛絵馬”は、この後に行ったもう1つの聖地、秩父神社でもいくつか見られた。
作品ゆかりの地だけでなく、商店街でも『あの花』ラベルのどら焼きやワインなどが売られている。比較的大きめのスーパーでもコーナーを設けて取り扱っており驚いた。
グッズを販売するだけでなく、キャラクターの絵も観光資源として活用。秩父神社の前に、『あの花』のシーンでパッケージした自販機を設置している。
秩父神社前で日没後に点灯するイルミネーションや、秩父橋などの作品ゆかりの地では、カップルや親子連れが記念撮影する光景をよく見かけた。
これは基本的に男性ファンのみで構成されていた『らき☆すた』とは大きく異なっている。『らき☆すた』は中心キャラクターが女子だけのゆるい物語なのだが、『あの花』は男女双方が登場する青春物語なので、性別を問わず楽しめることが影響しているのだろう。
秩父神社前の店舗には、聖地巡礼する人たちが交流するための黒板があり、年越しイベントの企画も書いてあった。ファン有志によるイベントということなのだが、寺社という年越しイベントに適した聖地を抱えながら、公式イベントを企画していないのは正直もったいないなと思った。
筆者も年越しイベントに参加したかったのだが、一応『らき☆すた』を定点観測しないといけないので、今回は泣く泣くスルーすることにした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング