アニメ『らき☆すた』の舞台となったことから、ファンが“聖地巡礼”するようになった埼玉県鷲宮町の鷲宮神社。正月三が日の初詣客はアニメ放映前の13万人(2007年)から42万人(2009年)にまで急増したという。
2009年3月に東京国際アニメフェアで行われたアニメツーリズムについてのシンポジウムで、鷲宮町の町おこしの取り組みを聞いた筆者は、鷲宮町を実際に訪れて、ブームが続いている様子を目の当たりにした。しかし、テレビアニメ放送から2年半が経った今も、その流れは継続しているのだろうか。そこで、筆者は鷲宮神社に行き、2010年への年越しの瞬間を確認することにした。
都内から電車を乗り継ぎ、最寄り駅の東武鉄道鷲宮駅に着いたのは大晦日22時半ごろ。電車には老若男女が乗っていたが、筆者と一緒に鷲宮駅で降りた人たちはすべて20〜30代の若い男性。東京ビッグサイトで3日間開催されていたコミックマーケットの最終日とあってか、数人がアニメキャラクターなどがプリントされた紙袋を提げていた。
鷲宮駅の改札を抜けると、壁に2種類の鷲宮神社初詣用ポスターが貼ってあった。1つのポスターは神社の写真を使った普通のポスターなのだが、もう1つの手製ポスターには『らき☆すた』のキャラクター名が書かれていたり、英語での案内が書かれていたりした。
鷲宮神社へ年越しの様子を見に行くにはまだ時間が早いので、少し鷲宮町を散策することにする。鷲宮町商工会の案内を見ると、年末年始でも営業している店がいくつか紹介されていた。鷲宮神社の鳥居前にある甘味処「大酉茶屋わしのみや」などでは、年をまたいで元日2時まで営業しているようだ。
鷲宮神社と逆の方向に歩くと、ある写真店の前に『らき☆すた』御輿が飾られているのを発見した。この御輿は鷲宮神社の「土師(はじ)祭」で実際にかつがれたもの。提灯に明かりが付けられていて、前を通る人たちが携帯電話を向けて写真を撮っていた。
9カ月前に来た時にも思ったのだが、『らき☆すた』ファンが描いた絵などを飾っている店が多いことに改めて驚く。前回は見なかった作品も増えていて、中にはファンが作った『らき☆すた』御輿の模型を店頭に飾っている店もあった。シンポジウムで北海道大学の山村高淑准教授が、「町おこし成功のポイントは交流にあった」と解説していたことを思い出す。
10分ほど歩くと、一連の町おこしイベントを仕掛けた鷲宮町商工会に着いた。留守番をしていた女性がいたので、お願いして建物内を見せてもらうと、一面に『らき☆すた』関連のポスターが張ってあり、もはや商工会とは思えない雰囲気。
女性いわく、年末年始に合わせていくつかのイベントを打ち出しており、大晦日も18時から「ツンダレソース」という2種類の特製ソースを新発売したそうだ。鷲宮町商工会Webサイトでは、「キャラクター商品だからと言って、中身が同じで、ラベルを貼っただけの商品にしたくなかったとの思いがあります」と本気度をアピールしている。
実は鷲宮町は2010年3月23日に周囲の自治体と合併して久喜市となるため、鷲宮町としての年越しは今回が最後となる。ただ、合併の混乱を避けるため、鷲宮町商工会はしばらく残るらしい。
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