この連載は『往生したけりゃ医療とかかわるな』(幻冬舎)から抜粋、再編集したものです。
数百例の「自然死」を見届けてきた現役医師である著者の持論は、「死ぬのはがんに限る。ただし治療はせずに」。自分の死に時を自分で決めることを提案した画期的な書。
中村仁一氏(なかむら・じんいち)のプロフィール
1940年長野県生まれ。社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長、医師。京都大学医学部卒業。財団法人高雄病院院長、理事長を経て、2000年2月より現職。一方、「同治医学研究所」を設立、有料で「生き方相談」「健康相談」を行う。1985年10月より、京都仏教青年会(現・薄伽梵KYOTO)の協力のもとに、毎月「病院法話」を開催。医療と仏教連携の先駆けとなる。1996年4月より、市民グループ「自分の死を考える集い」を主宰。
→医者は病気のことなら何でも分かる――そう思っていませんか?【第1回】
→大病院ほどいい医者が多い――そう思っていませんか?【第2回】
→マスコミに登場する医者は名医――そう思っていませんか? 【第3回】
→「あなたは確実にこうなる」と言う医者は“ハッタリ屋”【第4回】
病気の予防にはワクチン、といわれます。前述のことを踏まえて、そのワクチンについて考えてみましょう。
2009年に“新型インフルエンザ”が流行しました。ところが、希望者全員にワクチンがいき渡らないと考えられたため、優先順位による予防接種が行われました。ワクチンを打っておけばインフルエンザにかからないと思っている人も多く、一部ではパニックも起きました。
全国紙、地方紙を問わず、紙面一ページを使った「新型インフルエンザワクチン接種について」という政府広報があります。これによれば「ワクチン接種の効果」について、「重症化や死亡の防止には一定の効果が期待されます。ただし、感染を防ぐ効果は証明されておらず、接種したからといって、感染しないわけではありません」とあります。
つまり、ワクチンを打ってもインフルエンザにはかかり、他人にもうつすということです。したがって受験生に予防のために打っておこうと勧めるのは、笑止という外はありません。本当に受験に備えるには、早めに天然ものにかかっておくことでしょう。
実際に老人ホームでは、予防接種をしていたにもかかわらず、死者の出たところもあるのです。しかし、そのことに関しては、マスコミは何のコメントもしていません。結局、死亡の防止といっても、ワクチンの直接作用ではなく、予防接種した人の身体が、どれだけワクチンに反応して、抗体という抵抗勢力をつくれるかということに尽きます。
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