首都圏で大地震は発生するのか? 分かったこと・分からなかったこと東大地震研究所の平田直氏が語る(3/5 ページ)

» 2012年03月09日 15時45分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

地震観測点を整備

 これまでの研究で分かったことをお話しします。首都圏というのはプレートの集合地点であるために、地震の数が多い。また「M8クラスの地震はしばらくは起きない」と思われていました。しかし今では、このことを疑わなければいけません。普通に考えれば、M8クラスの地震は100年ほどは起きないでしょう。しかしM7クラスの地震は、非常に高い確率で首都圏のどこかで起きる。このことが、私たちの研究で分かりました。

 「M7クラスの大地震は、30年間に70%の確率で起きる」と言われていますが、それがいつ起きるのか。その地震が起きたとき、建物はどうなるのか。そこに住んでいる人々はどうなるのか。といったことを考えなければいけません。

 そこで私たちは5年間かけて、首都圏に約300カ所の地震観測点を整備しました。日本列島は世界で最も地震計がたくさんある国です。地震観測点は約20キロメートルの間隔で存在し、全国に約1000カ所設置されています。

 そこでは24時間365日データを取り続けていて、地震がどこで起きているのかを調べています。しかし地震観測点は約20キロメートル間隔にあったので、首都圏では数点しか整備されていませんでした。そこで私たちは約5キロメートル間隔で、地震計を設置していきました。

 地震観測は、都市部ではあまり行われてきませんでした。なぜなら都市ではクルマがたくさん走っていたり、人間の活動があるので、観測をしてもノイズだらけでうまくできませんでした。そこで私たちは都内の静かな場所として、小学校や中学校の校庭などに地震観測点を設置しました。都内でも深さ3キロの井戸を掘って、そこで観測をすれば山の中で観測するのと同じように記録することができます。そこで都市では深さ20メートルほどの井戸を掘って、その下に地震計を設置しました。そこからインターネットを使って、地震研究所にデータを送信する仕組みを作りました。

首都圏にある地震観測点(左)、小中学校の校庭に20メートル観測井を掘って観測点を設置した(右)

 こうした観測をすることで、何が分かったのか。地震の記録を解析することによって、地下の断面図を作りました。病院で検査をするときにCTやMRIを使って身体の断面図を撮ってもらうことがありますが、同じような形で地下の断面図を作ろうとしました。そのためにはなるべく多くの地震計があったほうが、得られる画像がくっきりするのです。

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