NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

» 2012年05月15日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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 震災直後、関東某所の避難所に、福島第一原発の作業員が妻と娘をつれて訪れた。彼は協力企業の人間からサーベイメーター(携帯用の放射線測定器)を奪うと、愛娘を調べ始める。すぐに針が振り切れ、ピーピーという大きな音。なだめる協力企業の人間から、「俺は毎日つかってっからわかんだ! やべえだろ、これ!」と怒鳴って取り乱す作業員。震災からまだ1週間ほどだったので、モニターを見て思わず息を呑んだ。

福島第一原子力発電所3号機(空撮、出典:東京電力)

 この映像はテレビ局幹部から「あまりにショッキングで、視聴者の恐怖心をいたずらに煽る恐れがある」としてボツになった。「報道の作法」に反するというわけだ。

 放射線の人体への影響はいまだに議論があるが、あの時、福島第一原発の作業員がこのような形で避難し、恐怖を感じていたというのはまぎもれない「事実」だ。あれはやはり報じるべきではなかったか、と個人的には思う。

 プライバシーや世論の反応を気にして言葉を選ぶのはいい。ただ、「報道」を名乗っているのだから、あまりに度を過ぎて事実から目を背けるというのは、逆に「道」を踏み外していることになるのではないか。

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