コラム
» 2012年06月12日 08時01分 公開

ゴビンダさん釈放の陰で報じられない、“灰色受刑者”たち窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

[窪田順生,Business Media 誠]

おまえから硝煙反応がでたぞ

 きっかけは、よくある話だった。

 妻と離婚協議中で、子どもの親権でもめていた時、Aさんの父が亡くなった。かわいがっていた孫なのでなんとか葬式に出てもらえないかと、妻に頼んで子どもが通う小学校へ向かった。すると、そこに警官があらわれて、「帰れ」「帰らない」とやっているうちにもみ合いになり、子どもたちのすぐ脇で銃声が響いた……というわけだ。

 「42歳の医師、警官の拳銃を奪い発砲……別居の妻とトラブル」

 なんて感じで、新聞、ニュースはしれっと報じたが、Aさんは拳銃ももっていないし、撃った姿を誰ひとり目撃していない。じゃあなんでこんな記事ができたかというと、Aさんが「自白」したのである。

 だが、これにはカラクリがあった。Aさんは生まれて初めて聞いた銃声のショックで、頭が真っ白になっているところで捜査員からこんなことを言われる。

 「おまえから硝煙反応がでたぞ」

 撃った記憶などないが、警察がウソをつくわけがない……というわけで「撃ったのかもしれません」と渋々認めた。

 これが真っ赤なウソだった。

 硝煙反応が出たのはAさんではなく、「銃を奪われた」と言い張る警官からだったのだ。

なぜ警察が痴話ゲンカに首を突っ込んだのか

 米国のテレビドラマ『24-TWENTY FOUR-』のジャックバウアーであれば、軽々とやってのけるだろうが、柔道や剣道で鍛えた警官の背後をとり、腰のホルスターのボタンを外して拳銃を抜き去り、安全装置を解除して空にむかって引き金をひく、なんて素人にできるわけがない。それに加えて、「自白」も誘導している。

 まともな神経の持ち主なら、警官の不注意で安全装置が外れていた拳銃が、もみあっているうちに暴発したというセンを考えるが、警察と検察は耳を疑うようなことを言いだし、裁判官もあっさりと追認した。

 「風向きによっては拳銃を撃たなくても硝煙反応がでる」

 硝煙反応なんてそんなもんアテになるか、というわけだ。暴力団やヒットマンが飛んで喜びそうなトンデモ判決だが、マスコミはそろってスルー。私のようなフリーしか記事にしなかった。なぜか。

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