Twitterが「亡くなられたユーザーに関するご連絡」という機能を盛り込んだのは、ユーザーからの要望や業界の機運といった理由からではなく、スタッフの将来を見すえた声が発端だった。
時期は2009年の終わりごろ。Twitter社広報は「亡くなられた方が出た時に、そのアカウントをどうするかという内部からの疑問が最初です。社内でも色々な意見が交わされて、遺された人たちの意志でアカウントの削除や公開ツイートの保存が選べるように取り決めました」と振り返る。
そうして2010年8月に新たな規約が生まれたが、現在までの約2年間の適用実績は非公開となっている。ただし、大きなヒントは与えてくれた。いわく、「この機能を公開してから、利用されるペースはそれほど変わっていません。そして2012年以降の半年間の依頼件数は全体でゼロです」とのこと。全世界で6億を超えるアカウントを誇るTwitterでも、実はそれほど頻繁に依頼が舞い込むわけではないようだ。実際、専門チームはなく、依頼があっても通常の運営スタッフが対応することになるという。
依頼件数の圧倒的な少なさには、手続きの煩雑さが背景にあるように思われる。Twitter社がユーザーからの依頼でアカウントを操作するには、依頼者と該当アカウントの関係を証明する公式な資料と、該当アカウントが亡くなったことを示す情報が必要になる。このハードルが高い。
依頼者の関係は、血縁があれば戸籍謄本などが有効だが、友人という間柄では証明が難しい。また、該当アカウントの死亡情報は、死亡届のような公的な書類でなく、その人についての死亡記事や追悼ページのリンクを示すだけでもいいが、そもそも該当アカウントが誰なのかを証明することが困難な場合が少なくない。それは、「Twitterは、色々な国の人に色々な用途で使われることを良しとしています。本人が特定されると命に関わるというケースもあるので、現実の人物とアカウントを強制的にひも付けることは考えていません」というサービス根本の理念からくる匿名性ゆえだ。
だから、Twitterが公式に本人確認しているような著名人ならともかく、本名や実生活と離れたIDやアイコンを使っているユーザーが亡くなった場合、周囲がその死を証明するのは相当難しい。その難易度は血縁以外の知人だとさらに上がる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング