東京都との交渉があくまで優先、尖閣諸島地権者の思いとは?(4/4 ページ)

» 2012年07月21日 12時22分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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東京都と一個人の売買の方がスムーズなはず

――領有権の問題が起こっていることについてどのように感じていらっしゃいますか。

栗原 「このままいくと戦争になるのではないか」という話がよく出るのですが、世界的に考えた時にそのようにならない状況を作るためには、お互いにこういう風に言い返すような状況のものを設定しない方がいいと思うんですね。すなわち東京都と一個人の売買の方がスムーズなはずなんです。

 国が買おうとすると、余分な発言が出てきます。例えば、国が購入すると、尖閣諸島の領海内に中国の監視船が入ってきた時、当然日本の巡視船が「ここは日本の領海だから出て行け」と言い、(中国の監視船は)「ここは中国の領海だから出ていけ」とお互いがお互いに言い合える状況を設定してしまうリスクが非常に大きくなるでしょう。

 日本の船と中国の船がお互いに言い合ってしまうというような実例ですが、7月17日に「中国の明の時代に『尖閣諸島は明のものはない』と明記されている(参照リンク)」と日本政府からではないですが日本側から発信されると、翌日の7月18日には香港の方から、「旧日本陸軍が作った地図の中に尖閣諸島が入っていない、だから日本のものではない」と発信されました。

 1つのテーマが精査されないうちに、お互いの言い合いがエスカレートしていくととても危険です。すなわち中国ではあるか分かりませんが、日本政府にシンクタンクがないのが一番の難点なのかなと感じています。

――自治体や政府に尖閣諸島を売りたいということは、栗原家に子どもがいないことで維持できないからということですか。

栗原 兄に子どもがいないということもそうなのですが、もう兄は70歳なので体力的、知力的にせいぜい頑張っても5年生きるか生きないかという状況だと思います。自分が生きている間に次の世代にしっかりと渡しておきたいという気持ちだと理解しています。兄は40年間守っていますので、疲れたんじゃないでしょうか。

――先ほど将来の危険を予測して迅速な判断をすることが大切だとおっしゃいましたが、石原都知事と尖閣諸島の売買契約交渉をされているということは何か具体的な危険や危機を予測しての動きなのでしょうか。

栗原 私は危険予知と言っていませんので、危機という風にご理解いただきたいのですが、危機予知能力という部分で申し上げると、先ほど申し上げたように、兄はもう70歳ですから自分の余命という危機予知とご理解いただきたいと思います。

 さも戦争が起こるがごとくのような表現方法が非常に飛び交ってしまうのですが、冒頭に申し上げましたように、私は政府の人間ではありませんし、当然政治家でもなく、一民間人なので、一民間人が40年間守ってきたということを1つご理解していただきたいと感じます。少なくとも危機と危険とを勘違いしないでいただきたいということです。

――栗原家で持ち続ける方がいいのではないでしょうか。

栗原 栗原家で持っている時に、兄弟は4人しかおらず、高齢で順次亡くなっていきますので、かえって持っている方が危険だと思います。

――この問題をめぐって日本と中国の国民感情が、この前の世論調査では非常に悪化しています。栗原家の方は今の日中関係をどのようなお気持ちで受け止めていらっしゃるのか、この問題の解決に向かって何かもしご提言があれば教えてください。

(会見を調整した)アイダヒロフミ氏 栗原さんとお話ししていて、決して栗原さん自身は国同士の争いは当然のことながら望んでいません。

 栗原さんが考えていらっしゃるのは、今回の尖閣諸島、民間が持っているところで国同士の問題になっているというのは非常に珍しいケースということ、もう1つ栗原さんがよくおっしゃっているのは、「世界中すばらしい人たちがいる。みなさんの国それぞれどの国でもすばらしい人がいる。それなのに国の問題になってしまうと幼稚園児のような子どもの争いをしてしまう。ですから、せっかくの機会なので、一民間人として世界の方々に自分なりの問題提起をここにいらっしゃるジャーナリストのお力をお借りして、問題提起というと大げさかもしれませんが、みなさんで考えることをやっていただければ」ということです。それで私の方に栗原さんから依頼がありまして、この場を設けさせていただけました。

――本日の報道では国が避難港あるいは灯台を作ると提案するようですが(参照リンク)、国からそういった説明を受けていらっしゃるのでしょうか。

栗原 1970〜80年代に沖縄漁民などの漁業という部分で、当時から灯台または避難港(が必要)というのがずっと1つのテーマになっています。それだけに(尖閣諸島の所有権が)国になろうと東京都になろうと、生活基盤を考えた時には灯台または避難港というのが一番いいと思います。

――国からの提案はあったのでしょうか。

栗原 1970〜80年代にそのような話はありましたが、現在はございません。

――今日の中国側の世論調査で、尖閣諸島の主権問題で9割が武力行使してもいいという状況になっているのですが(参照リンク)、これでも売ったりするようなことを考えていますか。

栗原 非常に答えづらいのですが、なぜそこに結び付くのかよく理解できないですね。9割の方というのがマスコミの方たちも中国は13億人ですから、10億人の方々がそういう意見だということだと思うのですが、どのようにカウントしたのか分からないのでお答えのしようがありません。

 正直なところ言いまして、みなさんは見識あるジャーナリストの方たちと思いますので、戦争に持っていくようなコメントを控えていただくとありがたいと感じます。

――いつまでに売るといったようなタイムラインみたいなものはありますか。

栗原 現在、国と私たちで2013年3月いっぱいまで賃貸借契約が存在していますので、最終的にはこれが過ぎた後だと思います。なるべく早くにまとめられればと考えています。

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