シリア情勢に並ぶ国際社会の関心事の1つに、イランの核開発問題がある。イランは核開発疑惑が取りざたされ、核開発を阻止する目的でイスラエルや米国が空爆を行うのではないかとその動向が注目されている。実は、この問題にも予想外のところからミュージシャンが登場する。
2012年7月、核兵器開発の疑惑でウラン濃縮が行われている中部のナタンズ核施設をはじめとするイランの核施設で新たなコンピュータウイルスが発見された。このウイルスは、施設内のPCを強制的にシャットダウンさせるだけでなく、真夜中に突然オーストラリア出身のバンドAC/DCの名曲「サンダーストラック」を最大ボリュームで流し始める。
この出来事で思い出されるのが、1989年に発生した米国によるパナマ侵攻だ。当時独裁体制を敷いていたマヌエル・ノリエガ将軍がバチカン大使館に逃れた際に、周囲を包囲した米軍は数日にわたってヴァン・ヘイレンのヒット曲「パナマ」などを大音量で流し続けた。そのかいもあってノリエガが降伏したというが、実際はバチカン大使館の人々が耐えきれなかったともいわれている。
ほかにも米政府が9.11同時多発テロ以降の対テロ戦争で拘束した容疑者を尋問しているキューバのグアンタナモ収容所でも、AC/DCの曲を大音量でかけて自供させる方法がとられていたことでニュースになった。
ちなみにグアンタナモに関しては、AC/DCだけでなくエミネムやメタリカ、レージ・アゲンスト・ザ・マシーン、さらにはカナダ人歌手のセリーヌ・ディオンの曲も使われていたと報じられている。
もっとも、尋問に大音量の音楽を使用することは国連で禁じられており、レージ・アゲンスト・ザ・マシーンのメンバーは、グアンタナモ収容所の封鎖を求めるキャンペーンを行った。
あのビートルズですら、英BBCから放送禁止処分を受けた曲がある。「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」という名曲は、その歌詞から麻薬を連想しかねないとして禁止されたのだ。ほかにも、アイルランド人歌手のビョークは中国でのコンサートで「チベット! チベット!」と叫び、それ以降、中国でのコンサート開催を禁止された。
ミュージシャンはずっと表現の自由を求めながら、メッセージを曲やステージだけでなく、それ以外の場所でも伝えてきた。ときに間違った使われ方をしたり、ミュージシャンとしての影響力があるがゆえ「場外」で話題になったりすることも少なくない。だからこそいろいろなニュースで名前が登場するのだ。
これもすべてひっくるめて、音楽という文化を楽しむ要素といえるだろう。そして、そこから国際情勢を知るためのきっかけにもなり得るということだ。
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