ここまでで、テーマと主な人物配置が決まりました。このキャラクター配置からすると、主人公が何か疑問を得て、上司がその疑問に答えることで主人公がなるほど感を得る、という流れが順当でしょう。オチもふわっとはしていますが(1)で「世の中の変化を受けて会社はどうするか考えていかないとね」という方向を示すところまでは仮置きしています。
「そっかー」と発見理解する役回りを主人公の若手女性社員に振るとなると、オチというか課題認識を整理して示す役回りは課長しかいません。となると、彼女が寿退社の記事情報を課長に話すという作りが素直でしょう。
なるほど感をどこで出すかですが、記事の調査データから会社の多様な施策検討につながってくるという切り口がすでに出ているので、これまた素直に使いましょう。「あ、確かにそういう話までつながってきますね!」と主人公が理解を深めるのが本ストーリーの目標到達点となります。あとは、どうやってその場面まで持っていくかを考えればいいだけです。ほら、素材の調理法を転がしているうちにだんだんと粗筋っぽいものができてきましたね。
物語の場面ですが、ちょっとしたやりとりをすればいいだけなので、制約はほぼありません。課長の机の近くでもいいですし、どこか外出している最中でも、会議中でも、ちょっとした合い間を演出すればいいだけなので何でもいけます。
具体的な流れも、課長に話しかけるきっかけと「そういえば」と切り出すことでこと足りるので、社外セミナーに行って帰ってきたところ、ベタに課長の机でもいいですが、軽くひねって自販機コーナーで飲み物でも買っているところをつかまえてセミナー報告をしたついでに、といった風にします。
主な要素はまとまったので1回整理しましょう。
ビジネスノベルの“ビジネス(知識)”の側面としては、網羅的な記述ではないですが、「会社の人事制度とは何か」「人事制度を考えるとはどういうことなのか」「人事部というのはどういうことを考えて仕事をしているのか」といったところです。会社の中にいても、人事部が具体的に何をやっているかは意識しないとよく分かりません。あくまで一端ではありますが、「あの人たちはそんなことを考えて仕事しているのか」と読んだ人が少しでも思ってくれればビジネスノベルとして成功です。
細かいですが、セミナーに行った理由も考えましょうか。「本来課長が行く予定だったが、他の会議で行けなくなったので勉強を兼ねて代わりに行ってこい」くらいで話になりそうです。「難しかったですー」というところから報告と質疑をする展開を作ると、「そういえば」で記事の話を出すのも自然です。帰ってきたところで、「ちゃんと目を開けて聞いていたか?」と軽くいじるような場面を冒頭に置くと、キャラクターの性格や人間関係を端的に示すこともできます。
1つのシーンをしっかり書くにはこれくらいの基本設計でいいでしょう。固有名詞や場面描写のための背景設定などは細かくなるので省きます。
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