知恵を出せば仕事が増え、お金が回るかもしれない佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係(4)(1/5 ページ)

» 2012年09月12日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係:

 少子・高齢化に歯止めがかからない日本市場は、「縮小していくのみ」「よくて横ばい」といった見方が強い。企業は沈みゆく市場から抜け出し、グローバル化の中で新たな“財宝”を手にしようとしている。製造拠点を海外に移転したり、海外との取引を増やしたり、社内公用語を英語にしたり――。

 こうした一連の動きによって、私たちの働き方はどのように変化していくのだろうか。また企業が巨大化すれば、私たちの生活は充実するのだろうか。この問題について、ITやメディア事情に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚さんと、アップルのどん底時代と黄金時代を経験した松井博さんが徹底的に語り合った。全9回でお送りする。


アップルで働くということ

佐々木俊尚氏

佐々木:松井さんの著書『僕がアップルで学んだこと』を読んで思ったのですが、アップルの幹部クラスに対抗できる日本人は極めて少ないだろうなと。また、自分はアップルで働きたくないなと(笑)。

松井::ハハハ。私もかなり壊れかけていましたから。

佐々木:アップルで働いている人たちはものすごく“肉食系”で、日本的なマインドとはかなりかけ離れていますよね。

松井:全く違いますね。でもあまりにも刺激的だったので、時々「戻りたいなあ」と思うんですよ。

佐々木:アドレナリンジャンキーかな(笑)。

松井:そうなんですよ。あのアドレナリンが放出していた時代が懐かしいなあと思うときがあるんです。アップルでずっと働くのは嫌なのですが、2年くらい働いて、辞めて……その繰り返しであれば悪くないなと。

佐々木:そうはうまくいかないですよね(笑)。

松井:もちろん、そんな会社はないでしょう。でもルーマニアの人たちって、大学や大学院を卒業してもあまり就職できないので、起業する人が多いんですね。そして会社の窓口を米国で立ち上げ、現地の企業にかなり食い込んでいるんですよ。仕事がきちんとしているので、米国企業からは評価が高い。おいしいところをもらうルーマニアのやり方が、参考になるのかなと思っています。

佐々木:私もそう思いますね。ひょっとしたら、最終的にはそうしたやり方しかないのかもしれません。コンサルタントの倉本由香利さんは、グローバルエリートとローカルサポートだけでなく、真ん中にもっと巨大な層が出てくるのではないかと指摘しています。そうした層はクラウドソーシングなどを活用して、例えば東欧に住んでいても米国の仕事をする。またApp Storeで小さなプログラム作って300円で売りましょうという人が、大量に現れてくる可能性はあると思います。

 プラットフォームを作ったり、仕組みを作ったりする人は、少人数でやればいい。

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