松井:多くの人は海外から来ているので、まず母国語と英語。そして中国語を学ばせる家庭が多いですね。土曜学校というのがあって、その日は中国の学校に入れたりするんです。なので、そうした子どもたちは大変ですよ。平日は現地の学校に通って、週末は中国の学校行かなければいけない。もちろん、宿題はたくさんありますしね。
佐々木:すごいですね。
松井:そうした子どもたちを見ていると、ものすごくかわいそうに感じるのですが、そうこうしているうちにみんな3〜4カ国が話せるようになるんですよ。ただ、シリコンバレーに住む子どもたちを見ていて、私はこのように感じました。「教育のマーケットは飽和している。逆に『勉強させない』『遊ばせます』といった保育園にしよう」と。
例えばオモチャひとつでも、1人1人にオモチャを与えないで、あえて取り合いが発生する環境をつくりました。そこで、子どもたちの間でちゃんと交渉能力を付けさせよう、という方針でやってみると、今では入園するのに2年待ちといった状況。このビジネスもニッチですよね。でも自分なりにニッチな世界を見つけることも大切だなあと思いましたね。
佐々木:世の中には、まだ見えていないニッチはたくさんあるはず。
松井:シリコンバレーには保育園がたくさんあるので、いわゆる待機児童はいません。ただ子どもが突然病気になってしまったり、また集団の中に小さな子どもを預けるのは不安、などといった理由で、保育園に登園できないこともあります。なのでベビーシッターのニーズがものすごく高いんです。いいベビーシッターは引く手あまたで、高い給料を手にしている。
私の知り合いでインド人のベビーシッターがいるのですが、彼女は引く手あまたなんですね。でも、彼女は子どもに厳しいのですよ。私ですら「怖いなあ」と思うくらい(笑)。子どもたちに「ちゃんとあいさつをしなさい!」といった感じで怖いのですが、子どもたちはスクスクと育っている。不思議ですよね。
佐々木:厳しいのがいいんですかね。
松井:彼女の評判がものすごくいいので、次から次に「自分の子どもを預かってほしい」といった依頼があるそうです。
佐々木:小さな仕事でも、いろいろなネットワークの中で紹介できるような仕組みがあっていいですよね。そうすれば、たくさんのベビーシッターが十分に生活できるほどのお金を手にできるような気がします。
松井:そうですね。
(つづく)
佐々木俊尚(ささき・としなお)
作家・ジャーナリスト。
1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社、月刊アスキー編集部を経て2003年に独立し、IT・メディア分野を中心に取材・執筆している。『「当事者」の時代』(光文社新書)『キュレーションの時代』(ちくま新書)『電子書籍の衝撃』(ディスカヴァー21)など著書多数。総務省情報通信審議会新事業創出戦略委員会委員、情報通信白書編集委員。
松井博(まつい・ひろし)
神奈川県出身。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウエア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。ブログ「まつひろのガレージライフ」が好評を博し、著書『僕がアップルで学んだこと』(アスキー新書)を出版。現在は2冊目の『私設帝国の時代』(仮題)を執筆中。twitterアカウントは「@Matsuhiro」
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