成熟期商品の生き残り方――ポスト・イットの場合それゆけ! カナモリさん(2/3 ページ)

» 2012年11月07日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

オフィスの外に飛び出せ――新市場開拓

 しかし、それでも国内ののり付き付せん製品の市場は、ここ数年、成長を見せていない成熟市場となってしまっているという。ゆえに、3Mの日本法人である住友スリーエムとしても、ポスト・イット製品を積極的に「オフィスの外」へ提案する必要が生じている。つまり、新規の顧客/市場に既存の製品を販売する「新市場開拓」戦略である。ターゲットは主に教育とパーソナルユースに置いているという。

 教育用で注目なのは「辞書引き用付せん」だ。これは、中部大学の深谷圭助准教授が提唱する、自ら学ぶ習慣が楽しく身につく勉強法として注目を集める「辞書引き」学習専用に開発したポスト・イット製品である。かなりニッチな市場であるが、付せん紙を大量に使用するという相性のよい学習法を見逃さずに市場拡大を狙っていることが分かる。

 こうした専用のポスト・イット製品を発売するだけでなく、付せん紙を用いたKJ法(データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめていく手法)を学校に提案するなどの展開も行っているそうだ。

 一方、パーソナルにおけるメインターゲットはポスト・イット製品にオフィスで慣れ親しんだOLだ。男性は手帳の電子化が進んでいるが、女性は紙の手帳の愛用者が多いことから発案したターゲティングであるという。

 事務用品としてのポスト・イット製品を手帳に用いて「自分の手帳にしっくりこない」「可愛くない」と感じる女性のいること、そこに潜在的なニーズギャップが存在することを見抜いた開発担当者は、「さまざまな用途に対応する各種リフィル」と、リフィルを自分の好みに合わせて組み合わせ持ち運べる「可愛いケース」を発売した。

 製品名を「ポスト・イット手帳用製品ポータブルシリーズ」という。9月からの発売であるが、売上は当初予想を上回って上々ということだ。

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