CESで注目された“Context Awareness”というバズワードビジネス英語の歩き方(2/2 ページ)

» 2013年01月28日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

Context Awarenessで能力開発も

 Context Awareness技術をまったく違う分野で生かすことも可能になるはずです、その人がどういう心理状態になりやすいか、どういう傾向から逃避しようとしているかといった情報を、1つのコンテクストとして整理し、本人が同意すれば、それらに対応する方法、心構え、あるいは効果が確認された薬、あるいはそこまでいかなくても、役に立ちそうな本を紹介するといった、Context Awarenessサービスも可能になるに違いありません。

 Context Awarenessを略すとCA。今まではCAと言えばキャビンアテンダントでしたが、これからはもう一つ別な使い方もバズワードになるかもしれません。

 さらにこの技術は、能力開発にも使えるようになるはずです。

 例えば、サッカー日本代表のメンバーに関して、長い間指摘されてきた決定力不足を解消するために、イントラネット内でのメールのやり取りから、個々人の発想の方向性を変えたり、ミーティングでのやり取りをファイルに起こし、それぞれの個性を分析した上で、シュートに行くべきタイミングで、どうしても余計なパスを出してしまう選手などに、意識改革をうながすことにも使えるはずです。

 そういう意味では、モノやサービスを売るためだけではなく、もっとはるかに広い分野に応用可能なのが、このCAという技術だという気がします。

日本はハイコンテクスト社会か?

 ITから少し視線を横にずらすと、このコンテクストという単語、欧米と日本、あるいは東アジアを比較した時に社会のありようの違いを論じるキーワードとしても使われてきました。

エドワード・ホール著『かくれた次元』

 基本的に、近代の欧州をローコンテクスト社会、東アジアの日本や中国などをハイコンテクスト社会と分類したのは、エドワード・ホールという米国の文化人類学者でした。剛腕編集者の松岡正剛さんのWebサイトでその一部が紹介されているので、ぜひ読んでみてください。

 ハイコンテクストというと、何だかローコンテクストより良いような感じがしますが、これはホール教授の遠慮というもの。住宅ローンを、低い金利で借りられない層に向けたローンを、サブ・プライムと名付けたのと同じです。「プライム(超一流)ではない=サブである」という詐欺のような名前を付けて、高金利の住宅ローン貸しをやり、金融危機を招いた時の言葉遣いと、ある意味では共通の言葉のあやがあります。

 ホール教授が言おうとしたのは、アジアの国々は、物事の決まりが多すぎて(コンテクストが決まり過ぎていて)不自由な社会だということ。欧州も中世という、ハイコンテクスト時代を乗り越え、さまざまな改革、技術革新、経済拡大などのプロセスを経て、ローコンテクストになっていったというのが、彼の解釈です。そこまで露骨に、はっきりとは言っていませんが。

 日本は相変わらず隅々までコンテクストが決まっていて、「とかくこの世は住みにくい」と思っている人が多いわけですが、会社にもローコンテクスト型とハイコンテクスト型があり、オープンで伸び伸び仕事ができる雰囲気はローコンテクスト型だと言えます。自分の会社のコンテクストはどっちに向かっているのか。一度立ち止まって考えてみて、その結論を仕事に生かしてみるのはいかがでしょうか。それも一種のContext Awarenessと言えるでしょう。

著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)

1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。

主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。


関連キーワード

英語 | 語学


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.