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個人事業主だって「節税」したい――税金の計算方法を紹介しよう増税サバイブ術(7/7 ページ)

» 2013年02月26日 08時00分 公開
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控除を増やして節税

 各種所得控除を増やす方法は、多くはサラリーマンと同様だ。現状のオススメは第3回のサラリーマンの節税で紹介した生命保険の見直しだ。特に若い人は平成23年までに加入した入院給付金などの医療保険を解約し、新規に契約すれば控除を増やせる可能性が高い。仮に少し保険料が上がっても税金で取り戻すことができれば、これから30年近い契約期間を考えると大きな節税となる。

 個人事業主ならではの控除を考えてみよう。まず前提として個人事業主は国民年金に加入しているため、厚生年金・企業年金に加入しているサラリーマンより将来受け取る年金が少なくなる。国民年金の納付額は収入に関係なく一律なので、20歳過ぎの大学生も年収1000万円の個人事業主も同額だ。サラリーマンの場合は年収が増えると納める年金が増え、さらに会社が同額を負担するので、年収600万円のサラリーマンが納める年金額は会社負担分も含めると国民年金の5倍以上となる。当然、将来受け取る年金も大きな差となる。

 さらに、個人事業主には退職金がない。サラリーマンの場合は意識していない人は多いと思うが、毎月退職金を積み立てていることになり、20年以上務めればそこそこまとまった金額を手にすることができる。個人事業主には定年はないが、ある年齢に達しリタイヤしたときには老後の資金となる一時金あるいは年金を自ら用意する必要があるということだ。

 そこで登場するのが個人事業主ならではの控除の主役「小規模企業共済」だ。小規模企業共済は国がつくった経営者のための退職金制度と言われるもので、掛金は引退後に一時金や分割で受け取ることができるので退職金や年金の代わりとなる。税金の面では、その年の掛金の全額が控除の対象となるので節税効果は高い。

 掛金は毎月1000円から7万円までを1000円刻みで設定できる。年間にすると1万2000円から84万円となり、懐具合に合わせて選択幅も広い。いつでも増額、減額ができるので売上げが落ちたら減額、回復したら増額ということも可能だ。

増額、減額は書類を1枚書いて銀行の窓口に出すだけ

 筆者は何度か掛金を上げ下げしたことがあるが、実際に増額、減額を行う人が少ないのか、銀行の窓口担当では処理方法が分からず、後方の人がマニュアルらしきものを探して対応してくれた。ちなみに筆者は12月に年払いをしている。もうかり具合や手元の現金によって掛金を変更している。12月に翌年の11月までの掛金を納めれば、その年に納めた掛金の全額が控除の対象となる。

 仮に満額の年84万円を納めたとすれば、税率が所得税20.42%の人なら住民税の10%も含め84万円の3割強、25万5528円もの節税となる。低金利の時代なので銀行に預金するよりもはるかに有効だろう。一定の条件を満たせば、納めた掛金の範囲内で事業資金として貸し付けを受けることもできる。受け取るときも退職所得控除の対象となるなどメリットは多いので、個人事業主を続ける人は是非検討していただきたい。

 将来の年金を増やしたいと思っている人は国民年金基金も節税に有効だ。定額の国民年金に任意で上乗せをするもので、全額が控除の対象となる。小規模企業共済を満額納めてもまだまだ現金に余裕がある人はこちらも同様の効果が期待できる。

 最後は青色申告をしている人の特典である「青色申告特別控除」だ。複式簿記で記帳し、貸借対照表、損益計算書を添付して3月15日までに確定申告を行えば65万円の控除を受けることができる。白色申告と同様な単式簿記で記帳すると10万円の控除となる。

 複式簿記による記帳など、ややハードルが高いのは難点だが、経費の積み上げや小規模企業共済のように手元に現金がなくても控除を増やすことができ、結果として節税となる。次回以降は青色申告ソフトの使い方を説明するので、青色申告特別控除をゲットしたいと思っている人は参考にしていただきたい。

監修:税理士 木村聡子(きむら・あきらこ)

 2000年に木村税務会計事務所を設立。ブロガー税理士の草分け的存在。セミナー講師や執筆について多数の実績があり。カフェ好きが高じてオフィスをカフェ風にしてしまったほど。ブログでは税金に関するトピックだけでなく、カフェラリーのデータも掲載中。

事務所名:木村税務会計事務所

住所:〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-11-10 ケヤキアパートメント201


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