新社会人に贈る言葉2013年版――自分の物語を編んでいこう(2/5 ページ)

» 2013年04月02日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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日本一の下足番になれ

 会社に入り、どこか受け身の姿勢で、何か「楽しい仕事」「やりがいのある仕事」「成長できる仕事」に出合うことを期待するならば、それは期待はずれに終わるでしょう。どんな仕事を任されるにせよ、そこに楽しさを見出し、やりがいを見出し、成長機会を見出していくのは、ほかならぬ自分自身の能動的な働きかけなのです。阪急グループ創設者の小林一三は次のように言っています。

下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみよ。

そうしたら誰も君を下足番にしておかぬ

 豊臣秀吉が織田信長の下足番からのし上がり、ついには天下を取った話は有名です。小林は著書『私の行き方』の中でこう書いています。

 「太閤(秀吉)が草履を温めていたというのは決して上手に信長に取り入って天下を取ろうなどという考えから技巧をこらしてやったことではあるまい。技巧というよりは草履取りという自分の仕事にベストを尽くしたのだ。

 厩(うまや)廻りとなったら、厩廻りとしての仕事にベストを尽くす、薪炭奉公となったらその職責にベストを尽くす。どんな小さな仕事でもつまらぬと思われる仕事でも、決してそれだけで孤立しているものじゃない。必ずそれ以上の大きな仕事としっかり結びついているものだ。

 仮令(たとえ)つまらぬと思われる仕事でも完全にやり遂げようとベストを尽くすと、必ず現在の仕事の中に次の仕事の芽が培われてくるものだ。そして次の仕事との関係や道筋が自然と啓(ひら)けてくる」。

 つまるところ、下足番のまま成り下がるのも、それを究めて次の大きなステップに自分を押し上げていくのも、その分岐は本人の心持ちと行動の中にあります。

 ですからまず3年間は、与えられた仕事に正面から向き合い、その仕事を自分なりに進化させる、掘り起こすことをやってください。そこを仕事の内容がつまらないからといって、すぐに居場所を変えようとしないことです。そこで逃げグセをつけてしまうと、それは一生ついて回ることになります。“一所”懸命でもがいてみて、何かをつかみとる経験をしてみてください。そこから次の展開が必ずみえるはずです。

 そもそも20代というのは自分の職業能力がどうあって、何に向いているかなどは分からないものです。いろいろと業務を経験する中で顕在化してくるのが職業能力です。むしろ想定外の仕事を任され、そこでもがくほうが未知の能力と出合えることが多いのです。これが1点目のメッセージです。

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