新社会人に贈る言葉2013年版――自分の物語を編んでいこう(5/5 ページ)

» 2013年04月02日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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不確実性の人生にあって「心のベクトル」を持て

 変化の激しい時代です。しかもみなさんは当面、職業上の興味や能力が明確に定まっていない20代を生きていきます。そんな中にあって、5年後や10年後の自分を想像することは難しいものです。ですから、「将来が見えない」「なりたいものが分からない」ということに落ち込む必要はまったくありません。私自身も20代は分かりませんでした。

 ただ、だからといって、漫然と多忙に過ごしていればよいというものではありません。私からのアドバイスは、何か「この方向ではがんばるぞ」のような“心のベクトル”だけは持つことです。私の場合ですと、20代のころは「自分なりに“新しい発想”を世の中にぶつけることをしぶとくやるぞ」と思っていましたし、30代のころは「人の向上意欲を刺激することに自分の能力を使いたい」でした。これが私の心のベクトルであり、言い方を変えれば、「働く上で中心にある価値軸」でした。

 将来の姿は必ずしもうまくイメージできないけれど、こうした心のベクトルを持ち、その方向に行動を仕掛けていくと、次第に道筋が見えてきます。行動で仕掛けるとは、自発的に「やってみる、提案してみる、形にしてみる、変えてみる、発信してみる、呼びかけてみる」などです。

 すると同じような価値軸を持った人が寄ってきます。そうした人たちと交流しているうちに、ますます自分のベクトルが強く明確になってきます。「ロールモデル」(模範的存在)となる人との出会いもあるでしょう。そしてついにベクトルの先に目指したいイメージが現れてくる。これがキャリアをたくましく拓いている人の想いを実現するプロセスです。

先が見えないから動けないのではありません。

動かないから先が見えてこないのです。

 私は結局41歳のとき、サラリーマン生活にピリオドを打ち、教育の仕事で独立しました。いまではこれが天職だと思っています。考えてみれば、20代のとき、あるいは30代半ばのとき、自分が将来教育の分野で独立し、メシを食っているなんてことは想像だにしませんでした。

 心のベクトルに従って、機会をみずからつくり、その機会によってみずからを変えてった結果、現在の納得の仕事人生があります。メーカーで働いたことも、出版社で働いたことも、いまとなっては過去のすべてのことが、この教育の仕事をするための必然だったように思えます。

 では、きょう最後のメッセージです。──不確実性を友としながら、想いを軸に積極的に動き、どんな人生展開になるのかを楽しみに待つというおおらかさとしなやかさを持ってください。


 拙著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』の中で私は、「仕事は梵鐘である」と書きました。お寺の鐘は、小さな棒っきれでたたけば小さな音しか鳴りませんが、丸太でどんとたたけばゴォーンと鳴り響く。それと同じように、仕事が与えてくれるものは、すべて自分の当たり方次第です。小さな音しか鳴らないことを「鐘が悪い」と文句をつけるのは筋違いです。あなたのたたき方が不十分なのです。

 縁があってお世話になる会社です。どうか会社という梵鐘を最大限鳴り響かせるような働きぶりで、納得のいくすばらしいキャリアを拓いていかれんことをお祈りいたします。また、どこかでお会いしましょう!(村山昇)

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