1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
ここ数週間、日本の株式市場の値動きが極端に荒くなっている。新聞やテレビニュースの見出しには「乱高下」の文字が躍る。黒田日銀による“異次元の金融緩和”で沸いたマーケットだが、黒田バズーカで上げた分を先週末までにほとんど吐き出す形になった(本稿執筆時点=6月8日)。こうした市場の乱調具合を受け、政府の主要閣僚らから「?」な発言が相次いでいる。乱高下のそもそもの原因は何かを考えてみる。
先月末、株式市況の悪化が顕著になった際、麻生太郎財務相は閣議後会見でこんな発言を行った。
「HFTという機械に乗せてやると、一方的に上がり始めるとうわっと上がるし、下がるときはだっと下がる。人間だったらそんなことにはならない」――。
HFTとは、ハイ・フリークエンシー・トレーディングの略。日本語訳すれば、超高速・高頻度の取引といったところか。世界の主要金融・資本市場で投機的な売買を繰り返すヘッジファンドや一部の機関投資家が導入している高度なシステムを使った取引の形態だ。
具体的には、人間が1回瞬きするよりも小刻みに、1000分の1秒の間に売買を執行。小刻みな値幅を取りながら、利益を積み上げていく取引手法だ。
もちろん、人間が一々売り買いの実行ボタンを押していたのでは間に合わない。ヘッジファンドなどが独自にシステムを作り、株価や外為の価格や出来高に応じて自動的に売買を繰り返す。また、米雇用統計や日銀短観など主要な経済統計が発表される前に、市場の事前予想をあらかじめインプットし、「予想より良ければ買い/悪ければ売り」といった具合に、売買判断を自動化している向きもある。
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