インターネットの発達により、マーケッターはデジタル分野でのマーケティング活動にも目配りをする必要に迫られている。6月13日に東京で開催されたイベント「Adobe Digital Marketing Forum」において、「そもそもデジタルマーケティングとは何なのか」というテーマでパネルディスカッションが行われた。
本稿は、パネルディスカッション「マーケティング活動におけるデジタルのあるべき姿とメディアの活用での最も重要な成功の鍵とは?」の内容を基に、編集・再構成したものです。以下、敬称略。
高畑哲平(KDDIウェブコミュニケーションズ 取締役副社長)
甲斐真樹(イー・エージェンシー 代表取締役社長)
小沢 匠(アドビ システムズ)
小沢: みなさん、こんにちは。アドビ システムズの小沢です。今日は、マーケティング活動全体におけるデジタルマーケティングの役割とはどういうものなのか。そして、トリプルメディア(※)といわれる「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」といったメディア活動の中で、どこに最も注力することが成功のカギとなるのか。この2つのテーマについて、3人で議論していきたいと思います。では、簡単な自己紹介をお願いします。
高畑: KDDIウェブコミュニケーションズの高畑と申します。当社は1997年以来の約16年間、営業マンを置かずにデジタルマーケティングだけでどれだけの収益を上げられるのかということを実践してきた会社です。いまでこそデジタルマーケティングという言葉がありますが、当時は一切ないインターネットの黎明期でした。「失敗の数では負けません」と言い切れるくらいさまざまな失敗をしてきましたので、今日は、そのあたりも織り交ぜながらお話したいと思います。
甲斐: イー・エージェンシーの甲斐と申します。私は1995年からインターネットの世界に身を置いておりまして、いくつか会社を経営しながら、現在ではデジタルマーケティングのコンサルティングや行動ターゲティングツールの活用支援といったサービスを提供しています。今日は、この20年弱の観点から分かりやすく問題意識を提供できたらなと思っています。
オウンドメディア(Owned Media):企業サイトや商品サイトのような自社が「所有する」メディアのこと
ペイドメディア(Paid Media):リスティング広告やバナー広告などの「購入する」メディアのこと
アーンドメディア(Earned Media):ソーシャルネットワークやクチコミサイトなど、ユーザーの信頼や評判を「獲得する」メディアのこと
小沢: デジタルマーケティングという言葉は、さまざまなところで聞かれます。高畑さん、あえてデジタルマーケティングを定義するとしたら何でしょうか?
高畑: 会場にいる人の中に「デジタルマーケティングとは?」と問われて即答できる人はいますか。これに答えられる人は少ないと思います。その定義は、会社によってまちまちだと思いますが、当社がやってきたことで定義づけてみます。
「AISAS」(※)と呼ばれる購買行動モデルがあります。仮にこの購買活動を是とするのであれば、デジタルマーケティングはどの領域を指すのでしょうか? よくいわれるのは「サーチ(検索)」と「アクション(購買)」です。検索エンジン対策をして、Webサイトに訪れた人の行動をアクセス解析していく。
ここでひとつ考えたいのは、自分自身の日常行動の中で、24時間デジタルデバイスに触れているのかということです。当然ですが寝ている間は触れていません。通勤時間に携帯電話の画面を見ているかもしれませんが、ゲームをやっているのだとしたら、そこに検索エンジンは存在しないわけです。
AISASの中で、オンラインもしくはデジタルといわれる部分はどれだけあるでしょうか。商品によっては、それに気付くきっかけがお店のショーウインドウの場合もあります。オフラインに接点があって、その後にオンラインで検索して購入に至ることも十分想定できるのです。
ですから、デジタルマーケティングの領域をデジタルだけで考えてしまうことを、私たちは「デジタル“だけ”マーケティング」と呼んでいます。デジタルマーケティングというのは、デジタルだけになった瞬間に、急激に確率が落ちるのです。
お客さんがどういう接点でモノに気付いて、どういうところで興味を持つのか。オフライン、オンラインに関係なく、ストーリーを考えてマーケティングすることが、デジタルマーケティングの定義なんじゃないかなと思います。
インターネットを活用する人の購買行動モデル。「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(購買)」「Share(共有)」の5つのフェーズで構成される。
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