日本企業に求められる「内向き同質体質」からの脱皮(2/2 ページ)

» 2013年07月11日 08時00分 公開
[日沖博道,INSIGHT NOW!]
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 以前どこかでバンダイ取締役の松永真理氏やベルリッツ名誉会長の内永ゆか子氏が指摘していたと記憶しているが、「優秀な女性を生かせない日本企業が多いのは、異質を排除したほうが幹部にとってコミュニケーションが楽で効率がよく、居心地がいいからだ」というようなことだった。これは真理をついていると思う。そして問題の本質は、そうした同質で固めた組織では「イケイケドンドン」のときには強い半面、現状に疑義を挟まないゆえに改革が遅れ、独創的なアイディアも出にくいことである。つまりイノベーションには向かない組織体質なのである。

 小生は業務改革や組織改革の際によく、変革への「5つの壁」という話をする。元々小生のいたアーサー・D・リトルという戦略コンサルティング会社で開発した組織変革手法のひとつなのだが、最初の壁は「認識の壁」である。そもそも問題があると思っていない段階では、人は変革・改革などという面倒くさそうな話には乗ってこない。「解決しよう」と持ち掛けても真剣に検討する気にならず、表面だけ付き合うふりをしながら適当にお茶を濁すといった行動を見せる。「内向き同質組織」ではとりわけ「認識の壁」が分厚く、そこを突破するのに多大なエネルギーを要する。

 同質体質からの脱皮は、グローバル人材獲得競争に勝つためにも必須だ。同質体質の企業では文化背景の異なる現地の人たちを幹部に昇進させるルートが細くなりがちだ。すでに進出した企業の先例のせいで、「日本企業では優秀な人間でも日本人男性でない限り昇進が難しい」という悪評が定着してしまっているケースも多い。創薬ベンチャー・アキュセラのCEOである窪田良氏(関連記事)が米国で起業した理由を問われて、日本より米国のほうが研究者の多様性に富んでいたから、と答えていた。そして「日本が真にイノベーティブな社会を目指すのであれば、人材の多様性を進め、異質なモノを許容する社会を作ることです」と強調していたのが印象に残る。

 小生は日本人がイノベーティブでないとはまったく思わない。しかし組織となると、多くの日本企業がその同質性ゆえにイノベーティブになりにくいことは認めざるを得ない。「チームワークのよさ」という強みを失わずに、異質な「個」を今後いかに育てて強めていくのか。まるでサッカーの日本代表チームみたいな話だが、柔道連の問題も多くの日本企業にとっては他山の石とすべきなのである。(日沖博道)

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