祭の行事が終わったあと、私は自家用車を南相馬市小高区の沿岸から、浪江町に向けて走らせた。従来、小高区と浪江町の境界付近に設置されていた警察による検問はなくなった。今年になり、警戒区域と計画的避難区域の再編が行われたためだ。
フリーのモノカキで、通行許可証を持たない私は、何度もこの地点でUターンしていたが、この日はあっけなく、浪江入りすることができた。
浪江の市街地に続く国道を走ると、急に道幅が狭くなったような錯覚に襲われる。道路の両側の雑草や樹木が育ち、つまり、誰も手入れしていなかったので、道路を覆うように伸びているからだ。
街の中心部に入ると、国道から町内各地に通じる道路には民間警備会社のガードマンが立っていた。住民や関係者以外は実質的に入れないようにしているのだろう。
国道を南下し続ける。カーナビのモニターをみると、まもなく双葉町との境界だ。すると、新たな検問ポイントが視界に入る。しかし、以前と全く違うのは、検問しているのが民間警備会社だということ。もちろん、私は通行証を持っていなかったので、ここでUターンした。
国道を北上する間、私は周囲の景色に目を凝らした。昨年5月、初めてこの地を訪れたときと、まったく様相が変わっていないのだ。ただ1つ違うのは、雑草が生い茂っている点。人の手が入らないままの土地に接し、「荒涼」という言葉しか思い浮かばなかった。
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