上記のような経験は何度もしていますが、上手くいくケースはそれほど多くありません。なぜなら、今まで何度も忠告されていて、「自分の好きなものを考える」というアドバイスそのものが陳腐化してしまっているからです。就活生本人も、おそらく幾度となくトライしているでしょう。そして、それでもなにも見つからない状態であるケースが多いのです。そして、ここにも隠れている真意があります。やりたい仕事が見つからない、分からない、と悩んでいる就活生の中には、本当はやりたいことがあるのだが、無理だと判断して言わないというタイプの人が一定数存在します。例えば「私はモデルになりたかったのです、ホントは」などと、就活終盤になっていきなりカミングアウトするケースです。これは枚挙にいとまがない。
人にはちょっと言いにくい趣味を仕事にしたいと考えているケースも同様でしょう。好きを仕事にしたくて仕方ないのに、それをするとダメだ、難しい、人としてどうかと思うと言われてしまうと、頭の中でグルグルと考えてしまって、結果として「やりたいことが分からない」という言葉がアウトプットされてくるのです。
これとは違いますが、そもそも働きたくない、けれども大学を卒業して無職というわけにもいかないから就活しています……という就活生も実はけっこういます。彼らも「働きたくない」という本意は言いませんから、表面上は「やりたい仕事が見つからない」と逡巡します。
彼らはそもそも働きたくないのですから、好きなことを質問したり、人生の中での喜びを整理させたりしても無駄です。相談者と受ける人の関係がある程度濃厚ならば、本音を聞き出すのが一番でしょう。本当はやりたいことがあるのでは? とか、実は働きたくないと考えていない? という感じで聞き出すのが良いのですが。就活をこじらせている学生は一筋縄ではいきません。多くのケースは「そんなことはないです」という話で終わってしまいがちです。
私の場合、こういうときは「先送りにする」というアドバイスをして終わります。例えば「やりたいことが見つからない」と相談されたら「見つかるまで待ってみたら」と。そして、そのために選択肢を一緒に考えます。進学したり留学したりして、猶予の期間を作る方法を示唆するのです。実際、そのための費用の捻出や、親御さんへの説得方法なども一緒に考えることもあります。先送っている間に、考えや環境が変化することもあります。いま解決する必要がないなら、先に送ってしまうほうが話が早いし、本人のためにもなるのです。
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