ツイートは災い元!? プロ野球選手の舌禍今昔物語臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/2 ページ)

» 2013年10月17日 07時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]
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元ロッテ監督のボビーも舌禍騒動で無職になりそう

 神戸の「事件」だけではない。日本では余り大きく報じられていないが、実はつい最近、同じような舌禍騒動が海の向こうでも起こっている。元ロッテの監督だったボビー・バレンタイン氏が2013年9月11日、ニューヨークを拠点とするラジオ局「WFAN」の「ベニグノ・アンド・ロバーツ・ショー」という人気番組内で、2001年に発生した米中枢同時テロについて「あのテロ事件の直後、ヤンキースの選手は何もしなかった」などと発言し、大きな物議を醸したのだ。

 実際には当時のヤンキースの選手たちがテロの被害者たちへの慰問活動や義援金の寄付などを積極的に行っていたことから、バレンタイン氏の発言に対して批判が集中。同氏はすぐに「あれは私の間違いだった」と謝罪したが、発言の趣旨が9・11に関連する非常にデリケートな内容だったため事態は沈静化しなかった。

ニューズデー ニューズデーによる報道

 「この舌禍騒動によって、バレンタイン氏は大事な職を失ってしまった」と報じたのが、ニューヨークの地元紙「ニューズデー」。同紙によれば「メジャーリーグのプレーオフ放映権を持つ全米ネット局TBSが試合中継の番組解説者として起用するはずだったバレンタイン氏を『イメージが悪い』として契約解除した」という。

 「バレンタイン氏は舌禍騒動のぼっ発後、密かにTBS幹部のもとを訪れて『世間から注目を浴びるような発言をすればリスナーが喜ぶと思って、つい口が滑ってしまった』と弁明したが、受け入れられなかった。TBS側は否定しているがニューズデー紙の報道通り、バレンタイン氏が問題発言によってクビになったのは誰の目にも明らか。彼は他にもスポーツ専門局の『ESPN』や『NBCスポーツ』などとも契約を結んでいるが、いずれの局も彼の今後の出演を凍結する方向で話が進められている。ヘタをすれば彼は、このまま完全に失職してフェードアウトに追い込まれてしまう可能性もある」(メジャー関係者)

 もともとバレンタイン氏は毒舌を売りにしていた。起用する側の米メディアもこぞってそれを期待する傾向があったが、ここ最近はメジャー関係者の間から「ボビーは明らかに調子に乗りすぎている」「一体、彼は何様のつもりなんだ」などといった苦言が増えつつあった。

 2012年のレッドソックス監督時代にも自らの采配をタナに上げ、メディアを通じて選手たちを批判し、チームは地区最下位転落の末に空中分解。わずか1年で職を解かれたばかりだった。2013年から解説者に復帰していたが、またしても失言によってジ・エンドとなってしまった格好だ。このバレンタイン氏のケースも「うぬぼれ」が招いた大きな過ちと言えよう。

メジャー史上最低最悪の問題発言

 このバレンタイン氏と神戸の問題発言で思い出されるのが、メジャーリーグで過去に短期間ながらセットアッパーとして活躍したジョン・ロッカー氏だ。同氏は2000年1月、アトランタ・ブレーブスに在籍していた現役時代に「メジャー史上最低最悪の問題発言」を発し、大騒動を引き起こしたことがある。

 米スポーツ専門誌「スポーツイラストレーテッド」のインタビューに応じたロッカー氏は、1999年10月のリーグ優勝決定シリーズで対戦したニューヨーク・メッツのファンに物を投げられたことに端を発して怒りを爆発。同誌の誌面上で、こうまくし立てた。

 「そもそもオレはニューヨークが嫌いなんだ。球場に通じる列車(地下鉄7番線)に乗ったら、まるでベイルート。紫色に髪を染めたガキ、その隣にはエイズ患者までいる。さらに隣には4度目の出所を終えた野郎がいて、その横には20歳で4人の子持ちの母がいる。嫌になるぜ。ニューヨークのタイムズ・スクエアだって全ブロックで英語を一言も聞くことなく歩くことができる。韓国人だろ、ベトナム人だろ、インド人、ロシア人、それにスペイン語を話すヤツら。アイツらどうやってこの国に潜り込んだんだ。オレは外国人が嫌いなんだよ」

 とにかく耳を塞ぎたくなる暴言のオンパレード……。ロッカー氏がニューヨークだけでなく全米中の怒りを買ったのは当然であった。しかも同時期、ロッカー氏はアトランタの街を車で運転中に荒っぽい運転をする女性ドライバーを発見した際、高速道路料金所の係員にツバを吐きながら「見ろよ、あのひどい運転を。あんな運転をするのは日本の女だ。アジアの女は何てヘタな運転をするんだ」と吐き捨てていたことも、当時のメディア報道によって明らかになっている。

 ニューヨーク市長からも非難声明が出されたことで事態を重く見たMLB(メジャーリーグ機構)はロッカー氏に出場停止及び減俸処分を通告。同氏はその後も現役生活を続けたものの騒動の影響もあって本領を発揮できなくなり、数年後に現役引退に追い込まれた。現在は更生して第二の人生を歩み、チャリティ活動にも従事しているというロッカー氏は最近「ESPN」の番組に出演し、過去の自分についてこう述べている。

 「とんでもなく愚かだった。あの当時の自分はメディアやファンからプレーヤーとして脚光を浴びていたことで、どんなことを言っても許されると思ってしまっていたんだ。本当に恥ずかしい。タイムマシンがあれば、昔に戻ってやり直したい。そう……、私はうぬぼれていたんだよ」

たった1度のミスで人生は大きく狂ってしまう

 うぬぼれが招く落とし穴――。失言騒動を検証すると、その大半がこういう答えに結びつく。後で「ヤバイ……」と気付いても、取り返しがつかないことだって多々ある。ましてやプロスポーツに携わるような影響力の強い人物であればなおさらだ。

 そういえば、酒によってタクシー運転手に暴行を加えたとして逮捕され、処分保留で釈放された元サッカー日本代表選手の前園真聖氏も「失言で墓穴を掘った」わけではないが、10月14日の謝罪会見で「心に隙、甘えがあった」と自身の行動を断罪していた。たった1度のミスによって人生が大きく狂ってしまうことを、われわれも肝に銘じなければいけない。

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