土肥:冒頭、佐渡島さんは「私が編集に携わってきた作品って、時代の空気を読んでいない」と話されました。この言葉の裏に、ヒットの秘密があるように感じるのですが。
佐渡島:時代の空気を読むのではなく、その作品で空気を変えたいと思っています。例えば『ドラゴン桜』の連載が始まる前、東大生の多くが「東大生であること」にどこかコンプレックスを感じていました。どこの大学に通っているの? と聞かれても「えと、その……(小さな声で)東大です」といった感じで。
それは東大卒の人も同じでした。東大卒ですか? スゴいですね、と言われると「えと、その……」といった対応をする人が多い。当時は「東大生であること」「東大卒であること」に対して、なんとなく“誇れない空気”が流れていたんですよね。
でも『ドラゴン桜』がヒットしてから、時代の空気が少し変わったのではないでしょうか。例えば、ヒット後に東大にまつわる本がたくさん出ました。
土肥:そういえば『東大合格生のノートはかならず美しい』という本が出て、かなり売れましたよね(関連記事)。このほかにもいわゆる“東大本”がたくさん出て、ちょっとしたブームになりました。でもその火付け役が『ドラゴン桜』であることは、多くの人は忘れてしまっているのでは。
佐渡島:残念ながら……。また、数年前から宇宙が注目されていますよね。宇宙に関するニュースをよく見たり、聞いたりするようになったのですが、こうした傾向は『宇宙兄弟』がヒットしてからなんですよね。でも、これも意識しない人が多い。意識されないくらい浸透するほうがいいのです。
「私が編集に携わってきた作品って、時代の空気を読んでいない」という話をしましたが、私は“空気がないところに、空気をつくっていきたい”。そのためには「自分がいい」と思った作品を信じて、編集していくしかないんですよ。
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