ティー・リーフ・ネーションの記事は果敢で頼もしい女神的リーダーシップ(2/5 ページ)

» 2014年01月07日 10時00分 公開
[ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ,Business Media 誠]

 「政府は言論の自由を認める道を選んだのです。いまや言論内容を統制することはできません」とワータイムは語る。ティー・リーフ・ネーションは、ネット言論のいわばフィルターのような役割を果たしている。雑音を除去して、その時々で地に足の着いた省察を促すのだ。

 ワータイムがティー・リーフ・ネーションの着想を得たのは、友人たちと一緒にワシントンDCのナショナル・モールまで散歩する道すがらだというから、なかなか風流である。彼らハーバード大学出身の三人は、公園内にあるジェファーソン記念館のそばで「自分たちにとって大切なものは何か」を語らったという(トマス・ジェファーソンは言論の自由を擁護したことでよく知られている)。

 「僕らは、中国と欧米の溝を埋めるために何かを創造したかったのです」

 これは、最初は途上国支援のNGO、平和部隊のボランティア、次いで大手の国際法律事務所の弁護士として、中国に足かけ10年滞在していたワータイムにとって、自然な発想だった。共同発案者のジミーとレイチェル(仮名)にもしっくりきた。ジミーは中国北部の沿岸部で生まれ育ち、ハーバード大学在学中に仲間とともにアジアン・ロー・ソサエティを設立した。中国南部出身のレイチェルは家族とともにアメリカにわたり、ハーバードへ進んだのだが、幼年時代は漢詩を愛読したという。3人とも中国への慕情と好奇心を抱いていた。人生で意味ある何かをしたいという強い思いによっても結ばれていた。

 3人はナショナル・モール周辺の散歩から生まれたプロジェクトを推進しながら、日々、中国社会の空気を探っている。微博(ウェイボー)に代表される各種の中国版ミニブログや他のソーシャルネットワークに目を通しているのだ。このように何百人ものおしゃべりを「立ち聞き」すると、かなり率直な意見を知ることができるという。ここから浮かび上がる中国人の姿は、多くの異邦人が想像するような偏狭で孤立したイメージとはかけ離れている。

 「中国には『雪かきは自宅の前だけでいい』という諺があります」とワータイムは語る。しかし彼の見たところ、オンライン上ではみんな、身の回りにとどまらずもっと遥かに幅広い問題に関心を向ける。地方政府や自治体のスキャンダルには通常、辛辣なコメントが洪水のように押し寄せるが、当局による検閲はまず行われない。わたしたちが中国を訪問した少し前には、違法な資金集めのかどで訴追された女性大富豪の呉英(ウー・イン)を救おうとして、何千もの中国人がネット上で嘆願運動を繰り広げた。大富豪はえてして疑いや妬みの対象となるが、呉英は裁判所が有罪と判断して死刑を宣告すると、世間の同情を集めた。

 「会ったこともない、しかもおそらくは有罪であろう人間のために、大勢が『不公正だ』と勇敢にツイートしていたのですから、感動しました。経済事件で死刑は行き過ぎだという思いがあったようですね。理由は明らかになっていませんが、最高裁判所は死刑判決を退けました。みんなが『自分たちの力で呉英を救える』といって、救済に力を貸そうとしたのですから、凄いことです」

 ワータイムらがティー・リーフ・ネーション上で描き出す中国社会には、政府が認める範囲内で人生をより楽しく満足のいくものにするための批判、意見の相違、創造性が溢れている。差し当たっては、社会の周縁部を中心にささやかな成果が上がるだけだろうが、一部では、優れた構想力のある人々が原動力となり、より大きな創造性の発揮、直接行動、市民による問題解決が可能な、いまとは違った中国をつくる動きも生まれている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.