お金に執着する人ほど、いろいろな紙切れを大切に持っている。割引券や優待券、抽選券、ポイントカードなどなど。これらはお金を節約するきっかけにもなる半面、お金を浪費するきっかけでもある。
これらの紙は、売る側が販売促進のためにばらまくもの。その券を持っているだけで得するわけではなく、もう1回、あるいはもう何回か続けて買い物をするから得をする(ようにみえる)仕掛けがなされている。
問題は、得をするために起こす消費行動がそもそも必要なことか、という点である。初めて買った靴屋さんで割引券をもらった。次回に5000円以上の買い物をすると、1000円割引きになるという。
しかし、靴などしょっちゅう買うものではない。次回がいつかも分からないし、たとえ覚えていて来店したとしても、買いたい商品がその店にあるとは限らない。でも、ゲットした1000円割引の券を使いたくてその店にまた戻ってくる。まるで飼いならされた伝書鳩ではないか。
欲しいものは、欲しいときに、ときめく場所で買う。それが人間の自然な消費行動だ。小さな優待や割引で、自分の未来の行動まで縛ってしまうのは、もったいないことではないだろうか。
買い物でマイレージやポイントを貯めようとすることにも程度がある。何でもかんでもマイレージ至上主義になってしまうと、それもまた操り人形のように思えてきて悲しくなる。私は今まで3000人の「お金の相談」に乗ってきたが、その中でも、損得ばかりで行動する貧乏思考の人は、お金に恵まれていない人が多い。
身近な例で言えば、バーゲンセールで無駄なモノを買ってしまうのも、欲張りの悲しい性であり、何枚ものクレジットカードを持っていたころの昔の私も、そのような行動をとっていた1人でもあったのだが……。
(なぜ貯金好きはお金持ちになれないのか?=終わり)
北川邦弘
ファイナンシャルドクター。北海道出身、1957年生まれ。早稲田大学政経学部卒業。
総合商社勤務の後に不動産デベロッパーに20年勤務。バブル期に100億円近い債務を背負い、自宅は競売に付され預貯金も差し押さえられる。職までも失うが、友人たちの応援を受けて2002年にライフデザインシステム株式会社を設立し、新たにファイナンシャルドクターとして個人の資産運用を啓蒙する仕事で再起を遂げた。
すべての体験を糧に、100歳までたくましく生き抜く人生戦略(定年までに1億円を作るプロジェクト)の普及に取り組んでいる。早稲田大学エクステンションセンターで人気講座「心豊かに生きるためのお金のお話」を9年間連続開講中。また、オールアバウトで資産運用のプロとして「大人のお金トレーニング講座」を連載中。CFP(上級ファイナンシャルプランナー)取得者。
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