「メイド・イン・ジャパン」の縫製工場が消えてしまう前にできることがある――ファクトリエの挑戦これからの働き方、新時代のリーダー(1/3 ページ)

» 2014年02月27日 08時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

「これからの働き方、新時代のリーダー」

「アクションリーダーの『知りたい!』に応えるオンラインビジネスメディア」を統一コンセプトとして、リニューアルしたBusiness Media 誠 & 誠 Biz.ID。Business Media 誠では「アクションリーダーに会いに行く」をテーマに、さまざまな識者にお話を聞いていきます。

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 かつて「ものづくり大国」といわれた日本の製造業が落ち込んでいるのはご存じのとおり。同時に、高い品質の代名詞だった「メイド・イン・ジャパン」の製品を入手する機会も減ってきました。特に、衣料品などの日用雑貨では顕著です。経済産業省によれば、1990年に50.1%だった国内におけるアパレル品国産比率は、2009年には4.5%まで落ち込んでいます。

 「このままでは世界に誇る日本の技術が途絶え、職人がいなくなってしまう」――こんな危機感から生まれたのが、商社や卸業などの中間業者を排除して、日本の工場ブランドのみを、消費者に直接販売するECサイト「Factelier(ファクトリエ)」です。

 今回、お話を聞いたライフスタイルアクセントの山田敏夫さんは、1982年生まれの若き起業家。1917年創業の老舗婦人服店の息子が日本のアパレル業界にもたらそうとしている革新とは何か? 消え行くメイド・イン・ジャパンにをどのように守ろうとしているのか? 約2時間にわたって、山田さんに熱く語ってもらったインタビューをお届けします。聞き手はBusiness Media 誠編集部の岡田大助(以下、敬称略)。

山田敏夫 山田敏夫/1982年熊本県生まれ。中央大学在学卒。在学中、フランスへ留学し、グッチパリ店に勤務し、一流のものづくり、商品へのこだわり、プロ意識を学ぶ。

1万円のシャツを作っても、工場には1500円しか入らない

岡田: 最近、自分が買った服を調べてみたのですが、ほとんどが中国製とか、ベトナム製でした。日本のブランドの服でも、「日本製」というタグが付いたものは少なくなっているようですね。

 でも、「ファクトリエ」で扱っているビジネスシャツやジーンズ、革小物など、そのすべてが、日本の工場がオリジナル商品として作っているファクトリーブランドです。当然、全部「日本製」。どうして「メイド・イン・ジャパン」にこだわっているのでしょうか?

山田: ご存じのように、日本のアパレル工場は急激に潰れていっています。海外工場とのコスト競争もありますが、職人さんたちの高齢化も大きな要因です。でも、日本の製造業ならではの高い技術力を持っています。ファクトリエとお付き合いのある工場にしても、世界の超有名メーカーの商品の製造を委託されているところもあります。

 それでも、工場は苦しいのです。それはなぜかといえば……。岡田さん、例えばお店で1万円で売っているシャツ1枚、このうち工場の取り分はいくらだと思いますか?

岡田: うーん、飲食業では「原価は3割」といわれていますよね。同じくらいでしょうか?

山田: 工場は15%もらえれば良いほうなのです。1万円のシャツだったら、1枚1000円ちょっとが工場の取り分になります。さらにメーカーは低価格な商品を求めます。そのしわ寄せは工場に来てしまっていて、過剰なまでに原価抑制を強いられているのが現状です。

 ファクトリエの第1弾ブランドとして2012年から売り出したビジネスシャツ「Factelier by HITOYOSHI」は、熊本県のシャツ縫製工場「HITOYOSHI」との提携で生まれたオリジナルブランドです。価格は約1万円と「安い」とはいえません。それでも高い顧客満足度が得られるのは、技術力が優れているからです。袖を通してみれば、その違いは分かるでしょう。

 実は同社、2009年に親会社が経営破たんし、閉鎖の危機に直面していました。そこで、高い技術力によって高級シャツ路線へと方向転換した結果、国内外の有名ブランド70社以上から生産を委託されています。

 日本には、HITOYOSHIのように高い技術力があっても、経営が立ち行かなくなっている工場がたくさんあります。だからこそ今、アパレル業界の慣習を変えなければならない。こういった「メイド・イン・ジャパン」の工場がなくならないように歯止めをかけ、世界に向けて発信し、復活させたいのです。

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