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クラウド? パッケージ? 青色申告ソフトの選び方消費税8%時代の確定申告(8/8 ページ)

» 2014年03月04日 08時00分 公開
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「やよいの青色申告14」を選ぶ理由

 何といっても青色申告ソフトのデファクトスタンダードである安心感は絶大だ。税理士に決算などを依頼する場合もスムーズに移行できるだろう。

 操作の流れを示すウィザード機能が充実しているので「何をしたらいいの」といった場合に流れがつかみやすい。ネット上には、やよいの青色申告を使った入力方法がたくさん紹介されていて、困ったときに調べるすべが多い。

 また、他社ソフトの多くが、やよいとのコンバート機能を持っていて、やよいのデータをビズソフトに移行するとか、マネーフォワード 確定申告のデータをやよいに移行するとか、デファクトスタンダードならではの特典もある。

 強いて望むなら、簡単取引入力が強化されると、さらに初心者には使いやすくなるだろう。後発のツカエル青色申告+確定申告14にその点は追い抜かれた印象だ。取引辞書を充実させるだけで劇的に改善されるので来年以降のバージョンに期待したい。

 加えて2014年中には、「やよいの青色申告オンライン」がスタートすることになっている。詳細は不明だが期待値は高い。できればパッケージ版にもクレジットカードなどのデータ取り込み機能を追加してくれるとうれしい。

「ツカエル青色申告+確定申告14」を選ぶ理由

 圧倒的な価格の安さが魅力だ。「かんたん取引帳」が充実しているので、記帳の簡単さでも初心者の助けになるはずだ。弥生と同様に完成度は高く、記帳した数字の整合性が取れていないとアラートで知らせてくれるなど安心して使える。

 もともと弥生にいたスタッフが開発しているので、やよいの青色申告を使っている人は、ほとんど迷わずに使えるだろう。筆者も今年初めて使用してみたが、非常に簡単に操作できた。

 初期設定で、売掛金の下に得意先を補助科目で登録するとか、按分のための準備とか、初心者が流れをつかみにくい点をガイダンスする機能が充実すれば、さらに分かりやすさが増すだろう。決算処理も同様で、もう少し分かりやすくなると、価格の安さもあるので入門用としては最適の選択になりそうだ。

 もっとも、個人的には「簡単にしすぎている」ことが気になった。例えば「かんたん取引帳」の日付はカレンダーからしか選べない。まとめ入力で1月、11月、5月と、飛び飛びの日付を入力するときは、カレンダー方式よりも、やよいの青色申告のようにキーボードでダイレクトに日付の入力ができたほうが効率がよい。

「マネーフォワード 確定申告」を選ぶ理由

 まずは、口座データの自動取り込みと自動仕訳だ。仕訳精度の高さもなかなかの優れものだ。基本的な考え方が従来の青色申告ソフトに近いので、過去にパッケージソフトを使用している人は、比較的抵抗感なく移行できるだろう。完成度が高いとはいえないが、その点は時間が解決してくれるはずだ。

 知り合いのライターさんは、弥生からマネーフォワード 確定申告に乗り換えて確定申告を終わらせた。聞くところによれば、弥生へのデータエクスポートが完璧だったとのことだ。弥生からのデータインポートもできるので弥生ユーザーは注目する価値がありそうだ。

 しっかり使い込むには、有料版を使用することになるが、マネーフォワード 確定申告は無料版も提供している。筆者も当面、データの取り込みだけは続けていこうと思っている。もし2014年後半に独立を考えている人は、今すぐに無料登録をしてデータだけは取り込んでおくと独立後に生かせる可能性がある。

 望むところは書ききれないほどあるが、まずはヘルプ、チュートリアルの充実。できれば弥生の流れのつかみやすさ、ビズソフトのかんたん取引帳の分かりやすさをクラウドにも取り入れてほしい。

「freee」を選ぶ理由

 斬新だ。正直、筆者には使いやすいのか否かが分からない。しかし話題性は高く、クラウド型青色申告ソフトの存在を世の中に広めた功績は大きい。freeeの登場によって無風状態だった青色申告ソフトに大きな変化が起こったといってもいいだろう。

 筆者は8年間、青色申告ソフトを使用しているので、freee以外の3製品は基本的な考え方が同じなので馴染みやすかった。だが、freeeはまったく違う視点で見なければいけないと感じている。

 最初は「補助科目がないの?」と疑問を感じたが、タグで管理すれば補助科目がなくても集計できる。むしろ、補助科目を作る方法では、初期設定を怠ると決算になって「アチャー」となりかねないが、freeeの方式であれば決算時に対応できる可能性がある。

 もしかすると、この斬新な考え方は初心者には一番分かりやすく、優しい方法なのかもしれない。また、実際に使用している知人に聞いたところ、サポートは極めて手厚いらしい。困ったときに自力解決よりも問い合わせをしたい人はメリットがありそうだ。

 望むところはマネーフォワード確定申告と同じだ。freeeからは「○○に対応しました」と新機能のニュースが多く、進歩するスピードに期待度は高い。完成度を高める、安心感を高めることに加え、凡人が思いつかないような「すごい、そんなことができるの!?」と驚かされるようなことを期待したい。


 1月から続いた連載「消費税8%時代の確定申告」も今回が最終回だ。筆者の長文で、納期ギリギリの原稿を監修いただいた木村聡子先生に感謝したい。木村先生の著書『注文の多い料理店の消費税対応』も2月26日に発売となった。小売業やサービス業向けに書かれているそうなので、是非お知り合いなどにご紹介いただきたい。

木村先生から一言:

 クラウド会計ソフトは、メールアドレスとパスワードでログインできるため、「使ってみたいけれど、セキュリティ面が不安」という人もいます。

 しかし、自分のPC内にデータがある場合でも、セキュリティ上のリスクは少なからずあるもの。逆にデータの保護については、自分のPCよりクラウドに預けているほうが機密度が高いといえます。セキュリティの不安は、パスワードを複雑化する、定期的に変更するなどの方法で自衛するようにしましょう。

 私は、クラウド会計ソフトの一番の利点は、クラウドサーバにバックアップがあるため、データ消失リスクが極めて低いことだと思います。まだまだパッケージソフトに一日の長がある感は否めませんが、こういった点も踏まえてソフトを選んでほしいと思います。


監修:税理士 木村聡子(きむら・あきらこ)

木村聡子

 2000年に木村税務会計事務所を設立。ブロガー税理士の草分け的存在。セミナー講師や執筆について多数の実績があり。カフェ好きが高じてオフィスをカフェ風にしてしまったほど。ブログでは税金に関するトピックだけでなく、カフェラリーのデータも掲載中。

事務所名:木村税務会計事務所

住所:〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-11-10 ケヤキアパートメント201

公式サイト:KIMUTAX.com


編集部からのお知らせ:

注文の多い料理店の消費税対応

木村聡子先生の新刊『注文の多い料理店の消費税対応』(中央経済社)が2014年2月26日に発売されます。

誰もが知っているあの童話「注文の多い料理店」の山猫2匹のやりとりをとおして、消費税率が2段階で切り替わるこれからの時期、事業者が実務で留意すべき点がこれ1冊で分かるという実用書です。まさに個人事業者や中小企業の経営者にぴったりの消費税改正対応本。木村先生曰く「ものがたり形式で税法が学べるという、野心作」とのことです。


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