市民球団「広島東洋カープ」、徹底した黒字追求型経営の姿勢とその裏側臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/3 ページ)

» 2014年04月17日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]
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「知られざるカープ」の一面も

 と、ここまではプラス面を書きつづったが、実を言うとカープの経営にはウラの面もある。熱心なファンや地元関係者の中には、それを知っている人もいるかもしれない。ここから先は“知られざるカープ”について触れていこう。

 カープは他球団と違って親会社からのバックアップが得られず、特定の企業に依存していないことで「市民球団」のイメージが色濃い。しかし市民が直接株式を保有しているわけではなく、市の税金などでまかなわれているわけでもない。実態は松田一族の同族経営となっており、ここから懐疑的な目を向けられることもある。実際に広島のメディア関係者からは「経営に批判的な記事を書けば、そのメディアは松田オーナーの怒りを買って即刻出入り禁止となる。そんなことをされれば、その社は命取り」「地方球団で担当記者も少なく、完全なムラ社会だからメディアはヨイショのオンパレード。こうやってカープの経営実態はどの社も触れることができず、松田オーナーのワンマン経営は守られているのです」との声も出ている。

 確かに、この球団は株式非公開企業であるがゆえに経営面は謎が多い。筆頭株主の松田一族、そしてマツダに次いで3番目に多い18.5%の株を所有するカルピオ(カープグッズの販売店)についても「そもそも球団と、どういう関係になっているのか」「筆頭株主は誰なのか」「グッズの売り上げ収入はどうなっているのか」といったさまざまな疑念があり、あげくには「松田一族と何か怪しい関係があるのでは」との憶測まで飛び交う始末だ。

 オーナーは、前記に対して「そんなことありゃーせんわいや!」と怒りを爆発させるかもしれない。ただし、それならば「市民球団」を掲げる球団なのだから財務諸表の詳細を一般公開してくれればクリーンだ(もちろん株式非公開企業のため義務ではないが)。親会社からの援助がなく、資金的に苦しい運営を強いられている以上、新しい経営手法を発案することも必要だ。しかし、現状はオーナーに残念ながらそのような考えはないようである。

 球団の経営が一時混乱したため、当時の東洋工業(現マツダ)社長の松田恒次氏に株式が集約されたのが1968年。それ以来、松田一族による同族支配が続いている格好だが、あくまでもこれは一時的なものだ。未来永劫、「市民球団」の広島東洋カープの経営を松田家に預託したわけではない。

 一部からは「松田一族は即刻カープ球団の経営から手を引くべき」との厳しい意見も聞こえてくる。それができないならば、松田オーナーは情報の開示と将来に対する明確なビジョンをファンに対して示す必要性があると考える。

 せっかく強くなったチームの勢いを無駄にしてはいけない。今こそ広島東洋カープが「松田個人商店」を脱する最大のチャンスである。

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