答えは簡単だ。今後若い人材はどんどん減っていくのだから、継続可能性を一番に考えるならば、若い人材にこだわらなければいい。
50〜60代の中高年でもできるように作業を楽にすること。子供が学校に通うようになり、少し手が空いた主婦でも分担できるように時間帯をより細かく分けること。接客は無理でも、他の人が嫌がる単純な仕事を黙々とこなせるといった人をぴったり合った業務にアサインすること――「今までこうやっていたから」といった固定観念を捨てれば、実行できることは少なくない。働きたい人はまだまだ世の中に大勢いるのだ。
また、すでに働いている社員やパート従業員、アルバイトスタッフに対する労働環境の改善も忘れてならない。いくら採用数を増やしても、既存スタッフにどんどん辞められるようでは、ザルで水をすくうようなものだ。その過程で「ブラック企業」とみなされれば、先の企業例と同様、働き手から見放されるだろう。成長など夢のまた夢だ。
そのためには、従業員に還元する付加価値を確保する必要がある。単なる低価格志向ではない製品やサービス、もしくはメニュー構成を新たに開発しなければならない。併せて、現状の業務方法に潜む、客にとって価値にならないムダやボトルネックを見つけ、それを解消することも必要だ。いずれも、固定観念を捨てなければ見えてこない。
直近では、産業界は人手不足に悲鳴を上げつつある。しかし今、こうした人手不足が表面化したことは、実は日本経済や社会にとって朗報だ。人材を使い捨てにするような企業を駆逐し、賃金を向上させてデフレを退治してくれるのだから。
「必要は発明の母」という言葉もある。苛酷な労働環境と人手不足を何とか改善しようという思いは、ロボットやITなどの改善ツールの開発を促すはずだ。やがて、日本に続いて人手不足時代を迎える世界各地の市場に、そうしたツールを輸出するチャンスを日本企業にもたらしてくれるだろう。(日沖博道)
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